8790.jpg
オリンパス旧経営陣3人に「594億円」の損害賠償が確定 支払えなかったらどうなる?
2020年10月29日 10時30分

オリンパスの巨額損失隠し事件をめぐり、同社と株主が旧経営陣らに損害賠償の支払いを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は原告・被告側双方の上告を棄却した。決定は10月22日付。

損失隠しを主導したとされる同社元会長ら3人に「計約594億円」の支払いを命じた東京高裁判決(2019年5月)が確定した。

過去には、大和銀行ニューヨーク支店で巨額損失が発生した事件をめぐり損害賠償を求めた株主代表訴訟において、「約975億円」の損害賠償を命じた大阪地裁判決(2000年9月20日)があったが、控訴審で被告側が銀行側に「計約2億5000万円」を支払うことなどで和解していた。

今回の訴訟は株主が経営陣の責任を追及した訴訟で確定した損害賠償額として、国内では過去最高額とみられる。

よほどの資産家でもない限り、「約594億円」は到底個人で支払える金額ではないが、今後支払いはどのように進められるのだろうか。また支払えない場合はどうなるのだろうか。島田直行弁護士に聞いた。

オリンパスの巨額損失隠し事件をめぐり、同社と株主が旧経営陣らに損害賠償の支払いを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は原告・被告側双方の上告を棄却した。決定は10月22日付。

損失隠しを主導したとされる同社元会長ら3人に「計約594億円」の支払いを命じた東京高裁判決(2019年5月)が確定した。

過去には、大和銀行ニューヨーク支店で巨額損失が発生した事件をめぐり損害賠償を求めた株主代表訴訟において、「約975億円」の損害賠償を命じた大阪地裁判決(2000年9月20日)があったが、控訴審で被告側が銀行側に「計約2億5000万円」を支払うことなどで和解していた。

今回の訴訟は株主が経営陣の責任を追及した訴訟で確定した損害賠償額として、国内では過去最高額とみられる。

よほどの資産家でもない限り、「約594億円」は到底個人で支払える金額ではないが、今後支払いはどのように進められるのだろうか。また支払えない場合はどうなるのだろうか。島田直行弁護士に聞いた。

●強制執行しても回収できない可能性がある

ーー損害賠償額「約594億円」。とてつもない額ですが、具体的な支払いはどのように進められるのでしょうか。

巨額の賠償額であるため、個人での任意の返済は困難でしょう。この場合、強制執行がセオリーになります。

ただし、強制執行しても回収できるとは限りません。実際には裁判で勝っても回収できないケースが少なくありません。

今回のケースでも、旧経営陣に資力がなければ、強制執行をしても空振りで終わるでしょうし、資力が不明であれば強制執行すらできない可能性もあります。

強制執行の実効性を高めるため、民事執行法が改正され(2020年4月1日施行)、(1)第三者からの情報取得手続の新設、(2)財産開示手続の見直しがなされましたが、それでもなお回収できないリスクは残ります。

●破産しても免責されないことも

ーー支払うことができなかった場合、債務者はどうなるのでしょうか。

返済困難な場合には、債務者として破産手続きを検討します。個人が破産をする目的は、「免責許可」を手にするためです。

免責とは、ざっくり言えば「もう支払いを強制されることはない」という状況です。免責を手にすることで生活の再建に取り組んでいきます。

もっとも、巨額の粉飾という今回のケースにおいて、当然に経営者が免責されるとは限りません。不法行為に基づく請求権であるとして免責の対象にならない可能性も十分考えられます。

ーー破産手続きは債務者側からしか行えないのでしょうか。

破産手続きは、債権者から申立をすることも可能です。

今回のケースでも、強制執行による回収が困難であれば、債権者から旧経営陣に対して破産手続きの申立てをする可能性があります。債権者は、破産管財人を通じて旧経営陣の資産関係を調査してもらうことになります。

●「直接粉飾に関わった旧経営陣の責任が保険でカバーされることはない」

ーー企業の経営者は保険に入っているとも聞きますが、今回の損害賠償責任についてもカバーされるのでしょうか。

経営陣は、その能力を活用して適切に会社運営をすることが期待されています。「事後的に責任追及されるのでは」と不安になれば、萎縮してせっかくの能力を活用できませんし、それでは株主の利益にもなりません。

そこで経営陣が損害賠償責任を追及された場合をカバーするのが「会社役員賠償責任保険」です。

もっとも、この保険は経営陣の違法な行為まで許容するものではありません。今回のケースでも、直接粉飾に関わった旧経営陣の責任が保険でカバーされることはないでしょう。

ーー未回収部分が残り、免責もされず、保険でカバーされないとすると、債務者は今後ずっと支払いを続けることになるのでしょうか。

基本的には支払いをしなければなりません。任意に支払いをしない場合には、資産ができるたびに強制執行される可能性があります。

ただし、すべての資産が強制執行の対象になると、生活すること自体が困難になります。そこで年金のように生活に必要とされるものについては、強制執行をすることが禁止されています。

仮に債務者が亡くなれば、相続人としては相続放棄をすることが多いでしょう。そうしないと相続人が債務を相続することになるからです。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る