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スーパーで「半額シール」付け替えた高齢女性 問われたのが「詐欺罪」ではなかった理由
2020年12月24日 10時53分

スーパーの半額シールを張り替え、精算を誤魔化すーー。昔からある犯罪だが、12月はじめ、和歌山で起きた事件で逮捕された女性(83)が問われたのは、電子計算機使用詐欺罪という聞きなれない罪名だった。

女性を逮捕した和歌山県警海南署によれば、「12月4日、女性が売り場にあった卵パックに店の半額シールを貼り付けているのを確認。女性がセルフレジで精算後、店員が常人逮捕(私人逮捕)した」という。女性が貼っていた半額シールは店のもので、「ほかにも数回、同じことをしている」と容疑を認めている。

今回、女性の逮捕容疑となった「電子計算機使用詐欺罪」とはどのような罪なのか。有人レジとセルフレジとでは、問われる罪は異なるのだろうか。本間久雄弁護士に聞いた。

スーパーの半額シールを張り替え、精算を誤魔化すーー。昔からある犯罪だが、12月はじめ、和歌山で起きた事件で逮捕された女性(83)が問われたのは、電子計算機使用詐欺罪という聞きなれない罪名だった。

女性を逮捕した和歌山県警海南署によれば、「12月4日、女性が売り場にあった卵パックに店の半額シールを貼り付けているのを確認。女性がセルフレジで精算後、店員が常人逮捕(私人逮捕)した」という。女性が貼っていた半額シールは店のもので、「ほかにも数回、同じことをしている」と容疑を認めている。

今回、女性の逮捕容疑となった「電子計算機使用詐欺罪」とはどのような罪なのか。有人レジとセルフレジとでは、問われる罪は異なるのだろうか。本間久雄弁護士に聞いた。

●有人であれば「2項詐欺罪」が成立する

ーー「半額シール」を勝手にはる犯罪行為は、昔からありますが、今回はなぜ「詐欺罪」ではなかったのか最初、疑問に思いました。

詐欺に関する罪について、刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定(この規定が想定する詐欺のことを1項詐欺といいます。)しています。

また刑法246条2項は、「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」と規定(この規定が想定する詐欺のことを2項詐欺といいます。)しています。

今回の場合、逮捕された女性は、卵パックに半額シールを貼ることにより、代金の半額を免れており、「財産上不法の利益」を得たものと言えます。そうすると、逮捕された女性は、2項詐欺罪に問われるように思われます。

ーーはい、そのように思ってしまいました。

ただ、2項詐欺罪が成立するためには、「人を欺」くという行為(欺罔行為、人を欺いて錯誤に陥らせる行為)が必要となります。しかし今回の場合、セルフレジでの精算ですので、無人のセルフレジを不正操作した段階では、人の判断作用が介在しないために、詐欺・錯誤の要件が欠け、2項詐欺罪は成立しません。

ーー有人レジの場合はどうなりますか

有人レジの場合でしたら、半額シールを貼って店員を欺くことになりますので、2項詐欺罪が成立します。

●電子計算機使用詐欺罪とは

ーー問われたのは電子計算機使用詐欺罪でした。これはどのような罪なのでしょうか。

コンピュータシステムを悪用する犯罪を罰するために昭和62年の改正によって設けられたのが電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)です。

電子計算機使用詐欺罪は、2項詐欺罪を補充する類型の犯罪であるとされ、法定刑は、刑法246条が規定する詐欺罪と同様、10年以下の懲役です。

刑法246条の2は、「前条(刑法246条)に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定しています。

ーー法学部の授業で習うような事案ですね。

今回のケースをまとめると、セルフレジという「人の事務処理に使用する電子計算機」に、事実とは異なる半額シールという「虚偽の情報」により、卵1パックの代金が半額になるという「財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録」がセルフレジに作られ、女性が代金の半額の支払いを免れるという「財産上不法の利益を得」たといえ、電子計算機使用詐欺罪が成立するものと言えるでしょう。

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