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裁判員裁判から外された「暴力団銃撃事件」 どんな場合に「除外」されるのか?
2013年10月11日 18時55分

本来は裁判員裁判になるはずなのに、例外的にそうならないケースが発生した。福岡地裁小倉支部は9月上旬、暴力団幹部が殺人未遂罪などで起訴された裁判を、裁判員裁判の対象から除外することを決定したのだ。この事件は、裁判官だけで審理されることになる。

報道によると、除外されたのは、特定危険指定暴力団「工藤会」(本部・北九州市)系組幹部2人が昨年1月、建設会社社長に対して発砲し重傷を負わせたとして、殺人未遂で起訴された事件の裁判。裁判官は、この団体が殺傷・発砲など一般市民への凶悪犯罪を繰り返していると指摘、「裁判員に危害が加えられる具体的な恐れがある」として、除外を認めた。

裁判員になる可能性は誰でもある。それだけに、どんな場合に裁判員裁判でなくなるのかは気になるところだ。裁判員裁判の対象から「除外」される要件について、裁判員制度に詳しい牧野茂弁護士に聞いた。

本来は裁判員裁判になるはずなのに、例外的にそうならないケースが発生した。福岡地裁小倉支部は9月上旬、暴力団幹部が殺人未遂罪などで起訴された裁判を、裁判員裁判の対象から除外することを決定したのだ。この事件は、裁判官だけで審理されることになる。

報道によると、除外されたのは、特定危険指定暴力団「工藤会」(本部・北九州市)系組幹部2人が昨年1月、建設会社社長に対して発砲し重傷を負わせたとして、殺人未遂で起訴された事件の裁判。裁判官は、この団体が殺傷・発砲など一般市民への凶悪犯罪を繰り返していると指摘、「裁判員に危害が加えられる具体的な恐れがある」として、除外を認めた。

裁判員になる可能性は誰でもある。それだけに、どんな場合に裁判員裁判でなくなるのかは気になるところだ。裁判員裁判の対象から「除外」される要件について、裁判員制度に詳しい牧野茂弁護士に聞いた。

●想定されているのは「組織的犯罪」や「テロ事件」

「裁判員法3条は、一定の要件を満たす裁判について、例外的に裁判員裁判の対象から『除外』することを認めています。

主な要件は次のような内容です。

(1)裁判員やその関係者らに危害が加えられるおそれ、または生活の平穏が著しく侵害される主張言動等が存在すること

(2)そのため、裁判員が職務を遂行することが困難となっていること」

それでは、たとえばどんな事件が除外の対象となるのだろうか?

「主に想定されているのは、組織的犯罪やテロ事件などです。

裁判に関わるだけでも具体的危険がある事件について、法律家ではない裁判員を参加させるのは過大な負担を強いることになる、というのが除外が認められる理由です。

ただ単に、裁判員候補者らが漠然とした不安を抱いているような場合は、『除外』されません」

●簡単に「除外」が認められるわけではない

「除外が認められる要件は厳格で、これまでに認められたのは今回のケースを含め、2件しかありません。両方とも検察官が要請したもので、裁判所は同じ福岡地裁小倉支部、対象も同じ暴力団という案件でした。

この2件は、一般市民への殺傷や発砲など凶悪犯罪を繰り返す団体として、具体的な危険の存在を例外的に認めた事案といわれています

他方で今年7月、さいたま地裁で行われた暴力団総長の組織的殺人事件の裁判については、除外が認められず、厳重な警備体制をとったうえでの裁判となりました。裁判後の記者会見で『不安を感じた』と話した裁判員もいて、市民参加の制度重視と裁判員の不安配慮の調整が課題となっているという意見もあります」

今後は、暴力団がからんだ事件以外でも認められる可能性があるのだろうか。

「いま争点となっているのは、裁判に時間がかかる『長期審理事件』を除外の対象とするかどうかです。これは、もともと裁判員法をつくる段階でも議論となり、当時は除外対象にすることを見送られたという経緯があります」

●裁判員裁判の「見直し」が進んでいる

なぜいまその議論が再び起きているのだろうか?

「裁判員法で施行3年後に制度を見直すと決まっており、現在そのための議論が行われている最中だからです。

法務省検討会の最終報告書案では、『年単位の長期事案』については、裁判員への負担から、除外規定にいれるとの意見が多数を占めました。

一方で、そういった非常に複雑な事件こそ、市民参加の対象とすべきだとの委員の意見もあり、私は後者の考えです」

長期にわたる裁判を裁判員裁判から除外しないとなると、裁判員の負担軽減が課題となりそうだが……。牧野弁護士は次のような「改革案」を提案していた。

「私案ですが、年単位の長期事案の場合、次のような工夫をしてはどうか、と考えています。

(a)裁判員の参加する公判を週1回にする

(b)『公判前整理手続』を改革し、公判開始後も法曹3者で『公判中整理手続』を継続する

(c)検察官の証拠は、弁護人も必要ならば当初から全部見られるようにする」

牧野弁護士の改革案の詳しい内容は、『週刊法律新聞』の7月12日号に掲載された寄稿文に記されている。このような改革案をはじめ、裁判員裁判の見直しの動きに注目していきたい。

(弁護士ドットコムニュース)

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