夏真っ盛り。水遊びは子どもたちの楽しみの一つで、中でも水鉄砲は人気の遊び道具です。ところが、その「楽しい遊び」が近隣トラブルに発展するケースもあります。
弁護士ドットコムには、「子どもが窓に向けて水鉄砲を撃つため窓が開けられない」「注意してもやめない」「窓が汚れて困っている」といった相談が寄せられています。
こうしたケースには、法的に問題があるのでしょうか。トラブルを防ぐためにどのような対応が望ましいのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。
●「不法行為」や「器物損壊罪」に該当する可能性も
──子どもが家の窓に向かって水鉄砲を撃ち、注意しても続ける場合、法的に問題はありますか。
水鉄砲で意図的に他人の窓を狙う行為は、単なる「迷惑行為」にとどまらず、民法上の「不法行為」(709条)に該当する可能性があります。さらに、注意されても繰り返している場合は「故意性」があるとみなされやすくなります。
また、程度によっては、軽微でも「器物損壊罪」(刑法261条)に問われる可能性があり、実害がなくても執拗に繰り返される場合は「威力業務妨害罪」(刑法234条)が検討されるケースも考えられます。
──窓が濡れたり、壁が汚れたりした場合、損害賠償は請求できますか。
民法709条に基づき、故意または過失によって他人に損害を与えた場合には、加害者側に賠償責任が発生します。ただし、水がかかっただけで、目立った傷や汚れがなく、クリーニング費用などもかかっていないようなケースでは、「損害」が認定されにくいです。
●関係をこじらせないために「穏やかな伝え方」を
──保護者に責任を問うことはできますか。
民法714条は、未成年者が他人に損害を与えた場合、原則として「監督義務者」(多くは保護者)が責任を負うと定められています。特に小学生以下の子どもであれば、保護者の監督責任が問われやすくなります。
ただし、保護者が「監督義務を尽くしていた」と証明できれば、責任を免れる可能性もあります。
──近所との関係をこじらせないために、どのような対応が望ましいですか。
トラブルを避けるためには、感情的にならず、冷静にやさしく伝えることが大切です。
たとえば、「水遊びは楽しいけれど、家に向かって水をかけられると困るの」とやわらかく伝えたり、子ども本人ではなく保護者に「少し困っていて…」と相談する形をとれば、角が立ちにくくなります。
「お忙しいところすみません」といったクッション言葉を添えるのも有効です。最初はやんわり伝え、改善が見られなければ記録を取りながら、再度相談するのが現実的です。
●「たかが子ども」では済まされない場合も
──法的手段をとる前にできる対応を教えてください。
直接伝えるのが難しい場合は、ポストに手紙やメモを入れる方法もあります。また、町内会やマンション管理組合を通じて、全体への注意喚起という形で問題を共有するのも効果的です。
さらに防犯カメラやインターホンの録画機能を活用して記録を残しておけば、万が一のときに役立ちます。
加えて、自治体が設置している「子ども・家庭支援センター」などに相談すれば、中立的な立場から助言が得られる場合もあります。学校や学童を通じて家庭に伝えてもらう方法も検討できます。
「たかが子どものイタズラだから」と軽視されがちですが、他人に実害や不快感を与えた場合には、法的責任を問われる場合もあります。
子どもをのびのびと遊ばせたいという親の気持ちはわかりますが、「他人に迷惑をかけてはいけない」ことをしっかり教える必要もあるでしょう。