9355.jpg
童謡「森のくまさん」替え歌CD、訳詞者が販売中止要請…法的にどう考えればいい?
2017年01月19日 10時29分

童謡「森のくまさん」の替え歌を無断でCDにして販売したとして、英語歌詞を和訳した馬場祥弘さん(72)が1月18日、ユニバーサルミュージックと歌っている芸人のパーマ大佐さんに販売差し止めと慰謝料などを求める通知書を送ったことが報じられた。

パーマ大佐さんの歌詞には、「ひとりぼっちの私を 強く抱きしめた熊」「だけど私はダメな子 人に言えない過去がある」など、独自の歌詞が加えられている。馬場さんはこうした改変について承諾しておらず、「著作者人格権の侵害にあたる」と主張しているという。

そもそも、外国語を翻訳した歌詞に著作権は生じるのか。替え歌を販売することは法的に問題はないのか。 河西邦剛弁護士に聞いた。

童謡「森のくまさん」の替え歌を無断でCDにして販売したとして、英語歌詞を和訳した馬場祥弘さん(72)が1月18日、ユニバーサルミュージックと歌っている芸人のパーマ大佐さんに販売差し止めと慰謝料などを求める通知書を送ったことが報じられた。

パーマ大佐さんの歌詞には、「ひとりぼっちの私を 強く抱きしめた熊」「だけど私はダメな子 人に言えない過去がある」など、独自の歌詞が加えられている。馬場さんはこうした改変について承諾しておらず、「著作者人格権の侵害にあたる」と主張しているという。

そもそも、外国語を翻訳した歌詞に著作権は生じるのか。替え歌を販売することは法的に問題はないのか。 河西邦剛弁護士に聞いた。

●「翻訳そのものに創作性があれば、著作権は生じる」

日本の著作権法上は、歌詞と曲は別の著作物となります。「森のくまさん」についてJASRACのサイトで検索してみると、曲については既に著作権の存続期間が過ぎていると考えられ、PD(パブリックドメイン)作品になっています。

今回は、「森のくまさん」を日本語訳した「森のくまさん日本語バージョン」の歌詞についての著作権が問題となりました。外国語を翻訳した歌詞であっても、翻訳そのものに創作性があるので著作権は生じます。

JASRACの検索サイトからは、馬場祥弘氏が「森のくまさん」の日本語訳の著作者ということになっています。著作者ということになると、著作権法上の「同一性保持権」という著作者人格権を取得することになります。

この同一性保持権というのは、著作物の変更、切除や改変を禁止する権利なのですが、著作者の意思に反して改変された場合、「著作者の人格が害される」という考えのもとに認められた権利です。つまり、馬場氏は「森のくまさん」についての歌詞を勝手に改変させることを禁止することができます。

実際裁判になった場合、裁判所が「森のくまさんパーマ大佐バージョン」を、「同一性保持権の侵害」と認定するかは、実際の訴訟進行との関係でどちらとも考えられるところでしょう。

現在の報道では、馬場氏サイドは、「森のくまさんパーマ大佐バージョン」のCD販売中止をしない場合には差止請求をするとの通知書を送ったとされています。

馬場氏は、CDの販売差止だけでなく、パーマ大佐がテレビやライブで「森のくまさんパーマ大佐バージョン」を歌うことの差止請求をすることが理論的には可能であり、その場合にはお茶の間で「森のくまさんパーマ大佐バージョン」が見られなくなることが考えられます。

お笑い芸人の方が、よく替え歌を披露したりしますが、歌詞の著作者に了解を得る必要があるということです。「面白いからいいのでは」「むしろ有名になっていいのでは」という考え方もあるかもしれませんが、法律上はそのようには考えられていません。作詞家の意に反して改変することはできないわけです。

日本の音楽業界では軽視されがちな作詞家、作曲家の権利ですが、法律に則り、きちんと保護される必要があるといえるでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る