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自殺や孤独死のあった家は「怖くない」 事故物件の"イメチェン"に奔走、不動産会社の試み
2024年05月30日 10時51分
#事故物件 #空き家 #孤独死 #多死社会

孤独死、自殺、殺人事件ーー。死者数が過去最多を更新し続ける日本では、こうした現場が今日もどこかで発生している。

住民が悲惨な亡くなり方をした家は俗に「事故物件」と呼ばれ、不動産としての価値を落とすことにつながる。

「多死社会」において避けられないこの課題に新たなアプローチで取り組むサービスがある。

その名も「成仏(じょうぶつ)不動産」。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

画像タイトル 花原社長は、初めて事故物件の買い取り依頼があった時に戸惑ったという

孤独死、自殺、殺人事件ーー。死者数が過去最多を更新し続ける日本では、こうした現場が今日もどこかで発生している。

住民が悲惨な亡くなり方をした家は俗に「事故物件」と呼ばれ、不動産としての価値を落とすことにつながる。

「多死社会」において避けられないこの課題に新たなアプローチで取り組むサービスがある。

その名も「成仏(じょうぶつ)不動産」。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

画像タイトル 花原社長は、初めて事故物件の買い取り依頼があった時に戸惑ったという

●ゴーストタウンに向かう未来に危機感

「サービスを始めた当時はひどい目でみられました。事故物件というと不動産業界では完全なタブーでしたが、しっかりしたビジネスになりつつあり、平気に思うユーザーが増えたように思います」

成仏不動産を運営する「マークスライフ」(東京都中央区)の花原浩二社長(47)は、そう振り返る。

花原社長は大学卒業後、大手住宅メーカーに就職し、昔ニュータウンとして住宅が次々と建てられたエリアに配属された。

だが、赴任するとすでに空き家が目立つようになっており、幼少期を過ごした故郷、兵庫県豊岡市の風景と重なり、ゴーストタウンに向かっていく未来を感じたという。

画像タイトル 事故物件の室内(マークスライフ提供)

●初めての事故物件に戸惑い

新しく住宅を建てることも必要だが、もともと空き家問題に取り組みたいと考えていたこともあり、「今ある建物を大切にしたい」との考えが強まって2016年に独立して会社を立ち上げた。

それから約2年が経ったとき、「孤独死があった物件を買い取ってほしい」と依頼を受けた。

しかし、「事故物件をどう査定すべきかわからず、買い取った後に売れるかもわからなかった」花原社長は、その場で即答できなかった。

画像タイトル 事故物件をリノベーションした後の室内(マークスライフ提供)

●ワケあり物件でも受け継がれていくように

その経験から、事故物件を専門に扱うサービス「成仏不動産」を2019年にスタート。全国の不動産会社が管理する事故物件を一つのサイト上で閲覧できるプラットフォームを整えることから始めた。

成仏不動産というネーミングについて、花原社長は「成仏は良い言葉。物件の持ち主が見つかって受け継がれていくというイメージが合っていました」と説明する。

マークスライフでは現在、相場に応じた物件の適正な金額を算出し、特殊清掃から遺品整理、リノベーションまで総合的に対応できるようにしているという。

画像タイトル 事故物件で特殊清掃をしている様子(マークスライフ提供)

●曖昧な事故物件の定義を明確に

リノベーションでは、天井を高くしたり壁の色を明るくしたり壁画アートを施したりするなど、事故物件と感じられない空間作りに努めている。

また、利用者によって心理的なハードルが異なることから、扱う物件を▽発見まで72時間未満の孤独死・病死物件▽発見まで72時間以上の孤独死物件▽火事や事故で人が亡くなった物件▽自殺物件▽殺人物件ーーの5パターンに独自に分類。

全てを「事故物件」としてひとくくりにして販売するのではなく、利用者が判断しやすいようにその分類を掲載し、情報を隠さず正確に情報提供することも心がけているという。

利用者は普通の家庭やシングルマザー、生活保護世帯などで、「安かったから選んだ」という理由が目立つという。

一般世帯の住民は入居を決める際に意見が分かれやすいため、一人世帯の方が判断に時間がかかりにくいそうだ。

画像タイトル 事故物件をリノベーションした後の室内(マークスライフ提供)

●夫が自殺した女性の言葉に気づき

成仏不動産でこれまで扱った物件は約450件にのぼるが、花原社長にとってショックを受けたのが子どものいる30代夫婦のケースだった。

自宅で夫が首をつって自殺した物件に対応した際、妻の女性が「うつ病は怖いですよね」とつぶやいた。

花原さんは「自殺は怖いというイメージがあるかもしれないが、その言葉を聞いたとき、これは自殺というよりも病死ではないのか」と感じたという。

「私は事故物件という名前が嫌いなんです。自殺や孤独死は怖いものではないということをもっと発信していく必要があると思っています」

画像タイトル 「最終的には孤独死がゼロになってほしい」と話す花原社長

●増加する1人暮らし高齢者の自宅での死亡

新型コロナウイルスの感染が拡大したときは外出自粛が求められ、孤独死や自殺が増え、遺体が発見されるまでの時間が伸びたという。

警察庁は今年5月、自宅で亡くなる1人暮らしの65歳以上が年間の推計で約6万8000人にのぼる可能性があることを明らかにした。

これについて花原社長は「当面伸びていくと思います」と指摘する。そのうえで「最終的には孤独死がゼロになってほしいし、会社としてはそれを見通して次のサービスを考えていきたいと思っています」と話している。

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