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「いじめの時効」はいつか…中学時代の同級生を提訴、28歳男性の事例から考える
2018年04月12日 09時38分

中学時代のいじめを理由に、28歳の男性と母親が元同級生とその両親、中学校を管理していた町に対し、計約2億円の損害賠償を求めて裁判を起こした。男性は、2014年に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、仕事にもつけない状況だという。

神戸新聞NEXT(3月26日)によると、男性は2002年に兵庫県内の町立中学に入学。この同級生から上靴を捨てられたほか、骨折させられるなどの暴力も受けたそうだ。いじめは別々の高校に入ってからも続いたという。

いじめがあったことは、当時の校長も認識していたようだが、10年以上も昔の責任を問えるのだろうか。「いじめの時効」について、高橋知典弁護士に聞いた。

中学時代のいじめを理由に、28歳の男性と母親が元同級生とその両親、中学校を管理していた町に対し、計約2億円の損害賠償を求めて裁判を起こした。男性は、2014年に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、仕事にもつけない状況だという。

神戸新聞NEXT(3月26日)によると、男性は2002年に兵庫県内の町立中学に入学。この同級生から上靴を捨てられたほか、骨折させられるなどの暴力も受けたそうだ。いじめは別々の高校に入ってからも続いたという。

いじめがあったことは、当時の校長も認識していたようだが、10年以上も昔の責任を問えるのだろうか。「いじめの時効」について、高橋知典弁護士に聞いた。

●在学中に裁判を起こすのは難しい 教師からの圧力も

「学校事件では、在学中に裁判に踏み切る難しさがあります」と高橋弁護士は語る。

理由は大きく2つあるという。1つ目は、学校からの圧力だ。「先生の中には、『訴訟になったら、子どもが今後学校内でどのような対応を受けることになるか分かりますか』などと、かなりの圧力をかけてくる人もいます」

2つ目は、時間がたたないと、被害の深刻さが分からないケースもあるということ。「引きこもりを例にすると、最初は『ちょっと機嫌が悪いだけ』、『反抗期と重なっているだけ』といった軽微な問題に見えます。しかし、数年たっても学校を避け続け、大問題だと分かるわけです」

結果として、裁判をするにしても、学校を卒業してからになることが多いという。

●裁判の中で子どもたちが傷つくことも

裁判になってからも、児童や生徒にはさまざまな負担がかかる。高橋弁護士によると、とりわけ大きいのが、学校や加害者側の主張(書面の内容や表現)によるダメージだという。

「相手方の弁護士はクライアントである学校を守るために、あやふやなことは否定し、『必要な対応はしてきた』などと記載してきます。会社案件であれば特に気にならないような記述ですが、繊細な子供たちは深く傷つきます。

また、裁判は大体半年〜1年かかります。子供にとっての1年は、友人関係も生活や授業の内容も、すべてに大きな影響を与えます。期間の長さに耐えられず、『何も動いてくれない』『裁判までやったのに、見捨てられている』といった絶望感を口にすることもあります」

●一方で時効は3年と短い…今回は後遺症が起算点になっている可能性

被害直後に提訴するにはさまざまな困難があるようだ。一方で時効は短い。

「訴訟では通常、不法行為に基づく損害賠償を請求することになります。この場合、『時効』は損害及び加害者を知った時から3年です(民法724条)」

今回の事例では、2014年にPTSDの診断を受けている(=損害を知った)そうだが、それでも時効の3年は過ぎているのではないか。

「ここからは推測になりますが、2014年にPTSDだと診断され、治療したものの、これ以上良くなりません(症状固定)ということで、後遺症になった可能性が考えられます。この場合、症状固定からが時効の起算点になります。

2億円という請求の大きさからすると、後遺症と診断され、今後も働くのが困難だと分かったので提訴した、ということかも知れません。このほか、PTSDの原因が、いじめだとはっきり分かったのがこの3年以内だったという可能性も考えられます」

ただし、訴訟を起こせるのと、主張が認められるのとは別。時間が経過してからの裁判には複数の困難が伴うという。

「時間がたっているために、いじめを証明する証拠が散逸している可能性が高いといえます。

また、PTSDなどと診断されても、いじめ以外にも原因となりうる事態を経験している可能性があり、いじめが原因といえるのかという因果関係の問題も生じることになります。子どもの被害、心の損害について何が原因かを立証するのは常に困難が伴います」

●それでも裁判を起こす理由 多くの原告たちに共通する部分

今回のケースでは、提訴までかなりの時間がたっていることから、「いつまでいじめを引っ張るのか」という疑問を持つ人がいるかもしれない。

しかし、「提訴するには勇気と体力が必要で、この二つが揃わずに、なかなか訴訟に踏み切れないのが現実です」と高橋弁護士は言う。

「親御さんも、『自分たちがいけないのではないか』、『子供がいけないのではないか』と逡巡を繰り返します。子どもと親さえも対立し、誰もが孤独な状態で悩み続けることもよくあるのです。

訴訟を行うことは、必ずしも真実にたどり着くこととイコールではありません。しかし、子どもの頃に受けた感動の影響で、信じられないほどの努力を重ねて金メダルを取る人がいるように、子どもの頃に受けたいじめのダメージで、その後の人生でずっと人や学校に恐怖を覚えてしまう人もいるのです。

そのことを思えば、いじめについて、訴訟を通じて社会に問うことは、あってしかるべきことだと考えています」

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