9536.jpg
政府税調が「夫婦控除」議論再開、税理士「増税のためではなく、真の意味での改革を」
2016年09月13日 10時17分

首相の諮問機関である政府税制調査会は9月9日に総会を開き、専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」を見直し、夫婦であれば働き方に関係なく適用する「夫婦控除」の導入に向けた議論を再開した。

報道によると、安倍晋三首相は総会で「経済社会は家族や働き方などといった面で大きく変化してきていて、所得税もこの変化を踏まえて変革が求められている」と述べた。政府税調は配偶者控除を含む控除制度全体を見直す提言を11月にもまとめる予定だという。

今後「夫婦控除」が導入されたとして、どのようなメリット・デメリットが考えられるだろうか。これまでの「配偶者控除」の仕組みは現代にはそぐわなくなってきているのか。久乗哲税理士に聞いた。

首相の諮問機関である政府税制調査会は9月9日に総会を開き、専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」を見直し、夫婦であれば働き方に関係なく適用する「夫婦控除」の導入に向けた議論を再開した。

報道によると、安倍晋三首相は総会で「経済社会は家族や働き方などといった面で大きく変化してきていて、所得税もこの変化を踏まえて変革が求められている」と述べた。政府税調は配偶者控除を含む控除制度全体を見直す提言を11月にもまとめる予定だという。

今後「夫婦控除」が導入されたとして、どのようなメリット・デメリットが考えられるだろうか。これまでの「配偶者控除」の仕組みは現代にはそぐわなくなってきているのか。久乗哲税理士に聞いた。

●「配偶者控除の趣旨が満たされなくなってきている」

「配偶者控除の趣旨は、憲法25条と民法752条の要請だといわれています。すなわち、生存権と夫婦間の相互扶助義務です。

所得があれば、基礎控除(すべての納税者が差し引ける所得控除)を受けることができますが、当然、所得がないと控除することができません。

『夫は外で働き、妻が専業主婦』という家庭が当然のように考えられていた時代では、『専業主婦の基礎控除部分を夫の所得から控除する』というのが配偶者控除の1つの考え方だと思われます。

所得がないため基礎控除を受けることができない配偶者(妻)の分を、もう一方の配偶者(夫)から控除することによって、生存権の所得税法上の要請を実現しようとしたわけです」

久乗税理士はこのように指摘する。女性の社会進出が進んでいるが、こうした制度は現状にあっているのだろうか。

「たとえば、パートなどで所得を得ると、給与所得103万円未満であれば、自分の所得から基礎控除を控除し、かつ、他の配偶者の所得から配偶者控除が控除されるという、二重に控除の恩恵を受ける状況になります。

専業主婦が前提であった社会であれば良かったのですが、多くの女性が仕事をするという今の社会では、趣旨が満たされなくなってきているのではないかとも思います」

●「相互扶助義務は専業主婦だけではない」

「一方で、夫婦間の相互扶助義務の観点から見ると、専業主婦の場合は、『税法上の内助の功』としての評価はあって良いと思います。

それが配偶者控除であるともいわれています。しかし、夫婦間相互扶助義務は、専業主婦だけにあるものではありません。

共働きの夫婦についても、当然、相互扶助義務はあるわけです。そうすると、共働きであっても、民法上の相互扶助義務を税法上、評価するべきだとも思います。

配偶者控除を廃止して夫婦控除にするということは、その方向性から考えると、理にかなっているのではないかと思います。

とはいえ、今は大増税時代ですから、配偶者控除を夫婦控除にするということが、増税のスケープゴートになるのではないかと危惧しております。

増税のための制度改革ではなく、真の意味での見直しになることを期待したいと思います」

【取材協力税理士】

久乗 哲 (くのり・さとし)税理士

税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。

事務所名 :税理士法人りたっくす

事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る