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トランプ夫人「盗用」スピーチライターが認める…演説の盗用は法的にアウト?
2016年07月21日 14時21分

アメリカ大統領選挙に向けて、共和党の党大会で行われたトランプ氏の妻であるメラニア夫人の演説の一部が、ミシェル・オバマ夫人が8年前に行った演説の盗用ではないかという指摘が出ていた問題で、メラニア夫人のスピーチライターが7月20日、盗用の事実を認めた。

報道によると、スピーチライターのメレディス・マクアイバー氏が7月20日、声明で、ミシェル・オバマ夫人が過去の過去のスピーチ内容を結果的に拝借したとして盗用を事実上認め、謝罪した。

演説の中でメラニア夫人は、子どものころに両親から教えられた価値観として、「言ったことは実行し、約束は守る」ことだと述べ、「子どもたちに伝えたい」として、「夢をかなえるのは意志の強さと努力を惜しまないことだ」と述べた。

これらの部分が、8年前にオバマ大統領の妻であるミシェル夫人がおこなったスピーチに酷似しているとして、盗用の疑惑が米メディアで大きく報じられていた。前半の部分は23単語が一致しており、後半の部分は30単語がほぼ一致していた。

日本で同様のケースが起きた場合、演説を盗用することは法的に問題となるのか。知的財産の問題に詳しい冨宅恵弁護士に聞いた。

アメリカ大統領選挙に向けて、共和党の党大会で行われたトランプ氏の妻であるメラニア夫人の演説の一部が、ミシェル・オバマ夫人が8年前に行った演説の盗用ではないかという指摘が出ていた問題で、メラニア夫人のスピーチライターが7月20日、盗用の事実を認めた。

報道によると、スピーチライターのメレディス・マクアイバー氏が7月20日、声明で、ミシェル・オバマ夫人が過去の過去のスピーチ内容を結果的に拝借したとして盗用を事実上認め、謝罪した。

演説の中でメラニア夫人は、子どものころに両親から教えられた価値観として、「言ったことは実行し、約束は守る」ことだと述べ、「子どもたちに伝えたい」として、「夢をかなえるのは意志の強さと努力を惜しまないことだ」と述べた。

これらの部分が、8年前にオバマ大統領の妻であるミシェル夫人がおこなったスピーチに酷似しているとして、盗用の疑惑が米メディアで大きく報じられていた。前半の部分は23単語が一致しており、後半の部分は30単語がほぼ一致していた。

日本で同様のケースが起きた場合、演説を盗用することは法的に問題となるのか。知的財産の問題に詳しい冨宅恵弁護士に聞いた。

●「演説の内容」も著作物にあたる

「演説は、言語の著作物として著作権法によって保護されています。

ですから、他人の演説内容と完全に同一、あるいは、実質的に同一と評価された場合には、著作権の一つである『複製権』を侵害する可能性があります。

ただし、他人の演説内容と完全に同一あるいは実質的に同一と評価できる演説が、常に複製権侵害となるわけではありません。ですから、オバマ夫人の演説とトランプ夫人の演説を単純に比較して、複製権を侵害するか否かの判断を行うことができないのです」

冨宅弁護士はこのように述べる。具体的にはどんな場合に、複製権を侵害していると評価されるのか。

「まず、他人の著作物に『依拠している』必要があります。

本件の場合でも、トランプ夫人の演説がオバマ夫人の演説に『依拠している』という事実を示す必要があります。両方の演説が『偶然同じ内容になってしまった』という場合には複製権を侵害するとは認められません。

トランプ夫人の演説がオバマ夫人の演説に依拠しているという事実を示すためには、オバマ夫人の演説が、多くの人に周知されていて、トランプ夫人の演説を作成したライターもオバマ夫人の演説を認識し得たという事実を示す必要があります。

たとえば、オバマ夫人の演説がマスコミでとりあげられていたのであれば、トランプ夫人の演説を作成したライターもオバマ夫人の演説に触れる機会があったと評価されるでしょうから、トランプ夫人の演説がオバマ夫人の演説に『依拠している』と評価される可能性があるでしょう。

今回、トランプ陣営から謝罪表明が行われたのも、おそらく、オバマ夫人の演説がマスコミでとりあげられており、多くの方に周知になっており、オバマ夫人の演説に依拠したことを否定できないと判断されたからではないでしょうか

●オバマ夫人の演説に「独自の創作性」はあるか

依拠していると評価されれば、複製権の侵害があったということになるのか。

「他人の演説に依拠して同一、あるいは、実質的に同一の演説を作成したというだけでは複製権侵害は成立しません。

そもそも、著作物は、人の思想や感情を創作的に表現したものをいいます。他人の著作物を使用したという複製権侵害についても、他人が『独自に創作した部分』を使用していなければ成立しないのです。

今回の問題でいえば、オバマ夫人の演説に『独自の創作性が認められる部分』が存在し、トランプ夫人の演説内容が、その部分と同一、あるいは、実質的に同一と評価することができなければ複製権侵害とは認められません」

独自の創作性あるかどうかは、どう判断すればいいのか。

「過去に行われた膨大な演説の内容との比較によって判断することになります。

オバマ夫人の演説が、比較的短いフレーズであるため、創作を加える余地が十分とは評価することができないこと、政治に携わる者であれば言及するような一般的な内容であることから、オバマ夫人の演説に、他の演説には存在しない創作性が認められない可能性が十分にあると考えています。

そして、オバマ夫人の演説に、他の演説には存在しない創作性が認められない場合には、トランプ夫人の演説がオバマ夫人の演説と同一であると評価されたとしても複製権侵害は成立しないことになります」

アメリカの法令に基づいても、同じ結論になるのだろうか。

「複製権侵害についての考え方は、アメリカと日本は、基本的に同じです。ただし、『依拠性』『創作性』といった要件の解釈が異なります。たとえば、創作性の部分については,アメリカよりも日本の方が厳格に解釈される傾向にあると考えています。そのため、同じ結論になるとは限らないでしょう」

冨宅弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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