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自民党パーティー券問題、議員ら「政策活動費だと思った」と弁解→元検事がバッサリ「法的に破綻している」
2023年12月21日 16時58分
#裏金

自民党の「パーティー券裏金問題」をめぐり、安倍派「清和政策研究会」などの議員たちはキックバック(還流)された金を「政策活動費だと思った」などと話しているという。

こうした議員側の釈明について、元東京地検検事の西山晴基弁護士は「想定通りだった」としたうえで、「この弁解は、法的には成り立たない」と指摘する。一体、どういうことか。西山弁護士に解説してもらった。

自民党の「パーティー券裏金問題」をめぐり、安倍派「清和政策研究会」などの議員たちはキックバック(還流)された金を「政策活動費だと思った」などと話しているという。

こうした議員側の釈明について、元東京地検検事の西山晴基弁護士は「想定通りだった」としたうえで、「この弁解は、法的には成り立たない」と指摘する。一体、どういうことか。西山弁護士に解説してもらった。

●「政策活動費」の「法の抜け穴」とは

政策活動費とは、「政党」から議員個人に寄附される政治資金のことです。

政治資金規正法は、個人や企業・団体から議員個人への寄附を禁じていますが、例外として、「政党」から議員個人に寄附することは認めています。以前から指摘されているのは、ここに「法の抜け穴」があるということです。

議員には、受け取った政策活動費を収支報告書に記載する義務が課されていません。いったん「政党」に入った金が、「政党」というブラックボックスを通じて、議員個人に還流されるわけです。

そのため、政策活動費は、議員個人が、どこから、いくら受け取ったのか、何に使ったのかを隠すことができる仕組みとなっています。

これまでに何度も問題とされて、法改正の必要性が訴えられてきては、そのまま放置されてきました。

●「政策活動費」という弁解は成り立つのか。2つの指摘

派閥から受け取ったパーティー券収入のキックバックについて「政策活動費なので収支報告書に記載する必要がない」という指示があったと報じられています。

しかし、「キックバック=政策活動費」という弁解は、大きく2つの点で破綻しています。

1つ目は、前述のとおり、政策活動費は「政党」からの寄附でなければならず、「政党」以外の者からの議員個人への寄附は禁止されている点です。

以下の図1のとおり、「政党」や「派閥」はそれぞれ政治団体の1つです(さらに、「派閥」は「政策研究団体」の1つです)。

画像タイトル 図1「政治団体と政党などの立ち位置」図2「キックバックの構造」

つまり、「政党」ではない、「派閥」から議員個人へ寄附するのは、禁止行為であるため、寄附をした「派閥」、受け取った議員個人のいずれもが、1年以下の禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。

破綻理由の2つ目は、「パーティー券収入」自体は、そもそも法律上「事業収入」であり、「寄附」ではないため、「政策活動費」とはいえない点です。

たしかに、パーティー券収入を「最初に」受け取るのは、パーティー主催者である「派閥」側であり、議員側ではありません。

しかし、ノルマ超過分のキックバックは、実質的には、各議員が集客して得られたパーティー券収入の取り分であることは明らかです。

そのため、「派閥」を介してキックバックの形を取ることにより、パーティー券収入の性質が「事業収入」から「寄附」に変わり、「政策活動費」になるというのは極めて稚拙な論理と言わざるをえません。  

●さらなる弁解を重ねる可能性

議員側が「政策活動費だと思った」などの弁解を突き通すには、さらなる弁解を重ねる必要があります。ここで想定される言いわけは「キックバックはいったん『政党』が受け取った。その後、他の金銭と混ぜこぜになった金銭を『政党』から政策活動費として受け取った」というものです。

つまり、図2のとおり、パーティー券収入を「派閥」から「政党」へ、「政党」から議員個人へという流れで、「政党」を組み込む(迂回させる)ことにより、政策活動費に偽装するということです。

もしこのような弁解がされれば、本来は議員個人に流すことが許されない「パーティー券収入」を他の政治資金に混ぜ込むことで、何のお金かわからないようにするものなので、いわば、「政界での『マネーロンダリング』」がおこなわれていたようなものです。

特捜部としては、このような弁解に備えて、まずお金の流れの全容を解明することを第一に考えて、すでに「弁解潰しの捜査」を始めているのではないかと思われます。

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