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「ベンチャー精神をもった人に弁護士になってほしい」法科大学院1期生弁護士がエール
2014年10月28日 10時50分

かつては資格をとれば一生安泰と思われていた弁護士だが、司法制度改革にともなう法曹人口の拡大で同業者間の競争が激しくなり、司法試験に受かったからといって安穏としていられない時代になった。そんななかで、これから弁護士を目指そうとする人たちに、どんな言葉を贈ればよいだろうか。10年前にスタートした法科大学院(ロースクール)の第1期生で、司法試験予備校の講師もつとめている西口竜司弁護士に聞いた。(取材・構成/杉田米行)

かつては資格をとれば一生安泰と思われていた弁護士だが、司法制度改革にともなう法曹人口の拡大で同業者間の競争が激しくなり、司法試験に受かったからといって安穏としていられない時代になった。そんななかで、これから弁護士を目指そうとする人たちに、どんな言葉を贈ればよいだろうか。10年前にスタートした法科大学院(ロースクール)の第1期生で、司法試験予備校の講師もつとめている西口竜司弁護士に聞いた。(取材・構成/杉田米行)

●中途半端な状態の「法科大学院」

――今年で10周年を迎えた法科大学院の現状について、どう見ているか?

「法科大学院は本来、弁護士になるための『専門学校』であるべきだと思うのですが、中途半端になっているのが実情です。法律の基礎を学問的に研究する『学者』と、法律の実社会への適用を常に考える『実務家』という2つの人種が、法科大学院という1つの組織の中に混在しているので、学生は困惑することがあるかもしれません」

――法科大学院の第1期生として、行ってよかったと思うか?

「確かにいろいろ問題はあると思いますが、すばらしい先輩弁護士の方に直接教えていただけて、学ぶことが多かったように思います。また、法科大学院で築いた先生方や仲間たちとの関係は、実際に弁護士となったときにも役立ちます」

――今後、法科大学院はどうなっていくか?

「変わる可能性が大だと思います。法科大学院淘汰の流れになっていますが、全体の定員が減れば、いい先生だけが法科大学院に残ることになります。少人数でよりよい教育ができるようになれば、学生の質も向上し、司法試験合格者も増えるというよい循環になるかもしれません」

●弁護士に向いているのは「精神的に図太い人」

――もし弁護士になりたいと思ったら、どうすればいいか?

「お勧めは予備校に行って、ガイダンスをうけることです。『○○基礎』『○○入門』といった講座が多数あると思いますので、いろいろと体験して、肌にあう先生の講座をとることから始めるのがいいと思います。予備校はまさに司法試験に合格するための実務最優先の専門学校ですので、目的達成のためには最適です」

――法科大学院よりも予備校か?

「現在でも、とてもよい法科大学院がある一方、そうでないところもあるようです。法科大学院は今まさに淘汰の最中で、よいところだけが残っていきます。法科大学院と予備校のダブルスクールをしている人もいます。人や状況にもよりますが、予備校のほうが便利なのかもしれません」

――どのような人が弁護士に向いているか?

「精神的に図太い人。ひどく叱られても『私のことを思って叱ってくれている。ラッキー!』と思えるような人。地道に努力を重ねることができる人だと思います」

●努力しだいで「新しい世界」を切り開くことができる

――弁護士になってからは何が求められるか?

「弁護士業は本来、自由競争です。サラリーマンのように毎月一定の収入があるわけではありません。自分を磨き、自分の実力をあげることで顧客がつき、生活ができます。まさに私達はベンチャー起業家と同じで、自分の努力しだいで新しい世界を切り開いていくことができます。さまざな分野を扱いますので、自分で事務所を経営して所属する弁護士を増やし、事務所を拡大していくこともできます」

――一般の人々にとって、弁護士事務所は敷居が高くないか?

「確かにそう思います。だからこそ私は、友達みたいに気軽に相談ができる『やわらかい弁護士』を目指しています」

――中小企業や零細企業、商店主等は、どのように弁護士を活用できるのか?

「問題がおおごとになる前に相談すべきです。契約書を交わすときは交わす前に見せてほしいと思います。問題を解決することよりも、予防が大切ですから」

――顧問弁護士がいれば心強いか?

「そうでしょうね。弁護士は法的なコンサルタントです。弁護士バッジの重みと責任があります。たとえば、お店に反社会勢力から嫌がらせがあった場合、顧問弁護士が相手に1本電話をするだけでおさまったということもあります。交通事故を起こした際、顧問弁護士を代理人としてたてれば、保険会社と対等に交渉をすることができます」

●今後も「自由化」の流れは加速していく

――なぜ弁護士になろうと思ったのか?

「大学3年生のころ、ゼミに大学OBの弁護士が来ていて、お話を聞いて憧れました。父は建設業だったのですが、さまざまなトラブルがあり、『せっかく法学部で勉強しているのだから、父親の手助けができないものか』と考えたこともあり、弁護士をめざしました」

――どのようなときにやりがいを感じるか?

「依頼主から感謝の言葉をいただいたときですね。最初、悲痛な表情だった依頼主が、問題が解決すると、すがすがしい表情になっていました。弁護士は人の生活再建に直結する、真剣勝負の仕事ですので、この仕事をやっていてよかったと思います」

――今後どのような活動を目指しているのか?

「TPP交渉もあり、日本も今後、ますます自由化の流れが加速していくと思います。そんな状況では、ベンチャー精神をもった人こそ、頭角をあらわしてくるでしょう。ベンチャー精神をもった人に弁護士になってほしい。そういったことが実現するように、今後も教育活動などに取り組んでいきたいですね」

(弁護士ドットコムニュース)

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