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がんの手術に800万円請求、生活費の見返りに性的関係…仮放免の外国人の嘆き
2022年03月18日 17時38分

在留資格はないが、入管に収容されていない「仮放免」と呼ばれる状態にある外国人たちが、食事や家賃、医療を確保できず、まさに生きていけないような厳しい状況に追い込まれている。支援団体は「仮放免者たちにも就労を認めるべきだ」とうったえている。

在留資格はないが、入管に収容されていない「仮放免」と呼ばれる状態にある外国人たちが、食事や家賃、医療を確保できず、まさに生きていけないような厳しい状況に追い込まれている。支援団体は「仮放免者たちにも就労を認めるべきだ」とうったえている。

●医療費は全額自己負担となっている

出入国在留管理庁のウェブサイトによると、仮放免とは「請求により又は職権で、一時的に収容を停止し、一定の条件を付して、身柄の拘束を仮に解く制度」という。

仮放免者の中には、さまざまの理由で日本に逃れてきたが、難民認定されなかったり、家族を持って長く日本に住んでいる人たちも含まれている。

仮放免の人たちは、定期的に入管に出頭しなければならないほか、住居・移動範囲が制限されていたり、就労することが禁止されている。

もちろん社会保障はなく、国民健康保険に加入できない。支援団体のNPO法人・北関東医療相談会の大澤優真さんによると、仮放免者が病院にいくときは全額自己負担になるという。

「結局、医療費を払えなくて、我慢するわけです。我慢して、重症化して、緊急搬送されて、場合によっては亡くなってしまうこともあります」(大澤さん)

●通常の3倍の診療費を請求された夫婦

北関東医療相談会はこのほど、全国の仮放免者の生活実態について調査して、その報告書(https://npo-amigos.org/post-1399/)を3月7日付で発表した。調査の期間、対象等は次のとおり。

調査期間:2021年10月〜12月
調査対象:調査期間中に仮放免状態である者
調査方法:郵送配布・回収、匿名調査
配布数・回収率:450件・31.3%(141件)

報告書によると、回答者の87%が20代〜50代の年齢層で、生活状況を「とても苦しい・苦しい」と答えた人は89%にのぼった。家賃の負担を「とても苦しい・苦しい」と答えた人も82%、医療費の負担を「とても苦しい・苦しい」と答えた人も87%だった。

翌3月8日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで開いた会見で、大澤さんは「就労許可を出すことが、最も効果的かつ合理的なことです。2021年からミャンマー人に対する緊急措置として、仮放免者に就労許可のビザを出してます。できないことはないです」と話した。

大澤さんによると、調査結果ではないが、ほかにも次のような過酷な事例があったという。

(1)「支援者」から生活費の見返りに性的関係を要求され続けている仮放免女性たち
(2)卵巣がんの手術代として800万円かかると言われた南アジア出身の母、母のために大学を退学した娘
(3)働けず食べるものもなく、学校から未払い給食費を請求され続けた東南アジア出身の母子家庭
(4)お金なく、家を追い出され、適切な治療や手術を受けられず、足が動けなくなってしまうことを待ち続けるアフリカ出身の男性
(5)医療保険に加入していないということで病院から通常の3倍の診療費を請求されたガン疑いの東南アジア出身の夫婦

●仮放免者「仮放免の制度をなくしてください」

会見には仮放免者も登壇した。ミャンマー国籍のミョーさんは次のように訴えた。

「日本に2006年に来て、今は15年以上経ちます。ミャンマーで軍反対の活動をやっていて、日本に逃げてきた。そこからずっと難民申請して、2013年から仮放免になりました。

仮放免だから仕事もできないし、自由に動けない。健康のために病院も行けない。今までどうやって生きていけたのと考えたら、いろんな人の助けもらって、いろんな人に頭を下げて助けてもらって、今この場にいます。

本当に仮放免の人たちは、本当に何もできないです。日本の助けをもとめて、こんな平和な安全な国の中で、自分らしくがんばっていきたい。助けをもとめてきたのに、その助けが・・・ふつうで出会っている日本人たちの心が本当に温かいです。

『どこから来ているの?』と聞かれます。『ミャンマーから来ました難民です』『何の仕事してる?』『わたし仕事していません』『なんでしてないの?』

そういう質問もしてくる人がいます。仮放免の制度がどんなに厳しくて、苦しいかわからない。だから、わたしたち、こういう場で話して、仮放免じゃなくて、日本の社会にまじめに生きていけるビザを出してほしいです。

健康保険に入れるようなビザに入りたいです。仕事をちゃんとしたい。この国の中でちゃんと仕事をして、家族の面倒をみたいです。他の人も助けたい。

先月6日、(海外にいる)お父さんが死にました。死ぬ前に、わかるです・・・お父さんの健康の状況。でも、わたし、何もできない。なにも助けられない。仮放免だから、仕事できないから、お父さんの治療費も出せなかった。お父さんが死んだ日も葬式代も出せなかった。日本にいるですよ、わたし。

だから、わたしたち仮放免の人たちが生きていけるように日本の政府はビザを出してほしいです。わたし自身もいろんな大変になってる。この場から、みなさんとつながって、日本の全国のみなさん、日本の政府、わたしたちビザのこと・・・入管、法務省、ほんとうにお願いします。

仮放免の制度をなくしてください。わたしたちは難民です。日本に助けをもとめてやって来ているから、ちゃんとビザを出してください。お願いします」

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