建設中のタワーマンションを買った人が、引き渡し前に転売活動すれば、手付金を没収して契約を解除する──。そんな"異例の通知"が話題になっている。
通知を出したのは、三井不動産レジデンシャル。日本経済新聞や朝日新聞によると、同社が販売する新築タワーマンション「セントラルガーデン月島 ザ タワー」(東京都中央区)の購入希望者におこなわれた。
この物件は都心の好立地にあり、販売予定価格は1億〜5億円台。手付金も数千万円にのぼるとみられる。
マンション価格の高騰が続く中、転売を目的とした購入を抑える狙いがあるとみられるが──。
SNS上では「手付金没収は違法じゃないの?」といった声も上がっている。この措置、法的には問題ないのだろうか。不動産にくわしい秋山直人弁護士に聞いた。
●特約は有効、公序良俗にも違反せず
──今回のような特約は、法的問題にならないでしょうか。
このような特約が無効になる理由はないように思います。
新築マンションの売主(デベロッパー)が、引き渡し前に買主が転売活動をした場合には契約を解除し、手付金を違約金として没収できるという特約を設けても、法的には有効と考えられます。
特約の趣旨は、短期転売による投機的な取引を防ぎ、実際に居住する消費者が購入しやすくすることにあると思われます。昨今のタワマン転売の実態を踏まえれば、正当な理由があるといえるでしょう。
また、この特約が「転売そのもの」を禁止するのではなく「引渡し前の転売活動」を制限することにとどまることからも、公序良俗違反(民法90条)や、消費者契約法10条に違反する「消費者の利益を一方的に害する条項」にはあたらないと考えます。
──数千万円の手付金を没収するというのは、やりすぎでは?
不動産売買の違約金は、売買代金の10%〜20%が一般的です。手付金相当額であれば、特別に高額とはいえません。
つまり、今回のような特約は、相場の範囲内で妥当と考えられます。したがって、法的にみても十分正当化できる可能性が高いといえるでしょう。