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「裁判所は地域で孤立している」 元鳥取県知事が指摘する司法と一般市民の「隔絶」
2014年09月23日 18時32分

「市民にとって本当に身近で利用しやすい司法」をテーマに、日本弁護士連合会が9月20日、東京・霞が関の弁護士会館で開催したシンポジウム。この日の最後に行われたパネルディスカッションでは、元最高裁判事、元県知事、ジャーナリストが登壇した。それぞれの立場から、民事司法を「具体的にこう改善すべきだ」というポイントを挙げ、それを実現するための策を話し合った。

「市民にとって本当に身近で利用しやすい司法」をテーマに、日本弁護士連合会が9月20日、東京・霞が関の弁護士会館で開催したシンポジウム。この日の最後に行われたパネルディスカッションでは、元最高裁判事、元県知事、ジャーナリストが登壇した。それぞれの立場から、民事司法を「具体的にこう改善すべきだ」というポイントを挙げ、それを実現するための策を話し合った。

●弁護士の「得意分野や実績」が知りたい

朝日新聞で論説委員(司法担当)をつとめる井田香奈子さんは、トラブルに悩む市民が適切な弁護士にたどり着けない現状があると切り出し、次のように語った。「法律相談の機会自体は以前より格段に増えていると思います。しかし、(利用者には)そこで会えるのが『自分が探している弁護士かどうか』がわかりません」。

井田さんは、「具体的な事件に悩んでいる人が話したいのは、その領域にくわしくて慣れている弁護士」だとしたうえで、「弁護士と利用者をどうマッチングしていくかというところで、かなり工夫できる余地があるのではないかと思います。それぞれの弁護士の得意分野や実績をわかりやすく示した資料があり、それを知ることができれば、司法救済への最初の一歩は相当踏み出しやすくなるのではないかと思います」と話していた。

●自治体から裁判所への「声かけ」が必要

一方、元鳥取県知事の片山善博さんは、「利用しやすい裁判所をつくる」という視点で話した。片山さんは知事時代から、「裁判所が地域で孤立している」と感じていたという。たとえば、地域の法律問題について、裁判所や弁護士会と一緒に取り組もうと声をかけても、弁護士会がすぐに応じたのに対して、裁判所は「忙しいから」となかなか応じてくれなかったという。

「(忙しいのは)それはそうなんだろうけど、もっと心理的な抵抗があったのかなと思います。でも、粘り強く働きかけた結果、消費者生活センターの相談案件や、DV問題、児童虐待問題などを共通の課題として、一緒に議論するような場ができました」

片山さんは、自身の体験をこう振り返ったうえで、「地方での司法の孤立を改善するためには、自治体から積極的な声かけが必要だと思います」と結論づけていた。

●「日本の裁判官は土日も休めない」

元最高裁判所判事の泉徳治弁護士は、裁判所の人員の不足を指摘した。イギリスやドイツなどに比べると、日本は「人口1人あたりの裁判官の数」が3分の1から11分の1程度しかいないとしたうえで、「(日本では)1人の裁判官が1か月に30件から40件の事件を処理しなければなりません。日本の裁判官は、ほぼ一年中、土日もない生活を送っている」として、裁判官を大幅に増やす必要性を訴えた。

なぜそんなことになっているのか。泉弁護士は「裁判所は、独自に裁判官一人を増やすこともできません」と述べ、裁判所が国の予算配分という観点からすると、単なる「外局の一つ」として扱われていると指摘。司法インフラを整備するための「お金」が足りないと強調していた。

井田さんはこの点について、「(日本の裁判所は)裁判官を増やす代わりに、清掃の人や警備の人を減らすといった、かなりギリギリのことをしています」と指摘。こうした問題点を改善し、民事司法改革を実現するためには、「政府と国会のコミットメントが不可欠」として、国会議員を動かすために、市民が声を上げていくことの重要性を強調していた。

パネルディスカッションの動画はこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=JS1KZ4bpnmw

(弁護士ドットコムニュース)

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