犯罪・刑事事件の解決事例
#暴行・傷害

全部無罪判決を勝ち取りました。

Lawyer Image
島田 敬介 弁護士が解決
所属事務所島田敬介法律事務所
所在地東京都 中央区

この事例の依頼主

60代 男性

相談前の状況

国選弁護人として裁判所から配転を受けた60代ベトナム人男性で、母国の戦争をきっかけに日本に避難し、難民認定を受けたため、母国語でさえ読み書きが十分でないという少し可哀想な境遇の方でした。当初の逮捕(被疑)事実は、マンション(恐らくゴミ置き場)から電気コードを持ち去ったというもので、似たようなことが過去にもあったようですが、それだけであれば、起訴猶予の可能性も高いと考えておりました。しかしながら、勾留期間の後、別の罪(半年ほど前の暴行事件で、そのときは警察で簡単な聴取を受け、すぐに解放されていた)で起訴されてしまった(求令状起訴などという手続です)という事案です。今から考えれば、いわゆる「別件逮捕」であった可能性は高いように思います。

解決への流れ

公訴事実(検察官が主張する罪の内容)は、被告人と被害者が(赤信号横断を注意されたなどとして)口論の上、被告人が自分の(止めてあった)自転車を被害者側に押し出すようにしてぶつけたというものでした。裁判が始まると、検察官は、新たな証拠として、被害者が暴行の瞬間を撮影していたというスマートフォンカメラの映像を提出してきました。その映像は、一見確かに、被告人が大声を出しながら、自分の自転車を被害者側に押し出しているようにも見える印象を受ける映像で、インパクト自体はかなりあるものでした(だからこそ、検察官も、有罪を確信して起訴したのだと思います)。しかしながら、映像を何度もよく確認すると、(主に被告人の上半身のみが映っていたものであり)自転車をぶつけたという事実が明らかに分かるものではありませんでした。さらに、(被害者の供述が、恐らくは事件当日から、かなり曖昧であったことが推測されますが)捜査機関が作成した被害者の供述調書などに、よく検討すればするほど上記の映像とも矛盾する点を見つけることができました。これらの映像や供述調書(証拠の矛盾点など)を十分に検討した上で、被害者の証人尋問や被告人質問に臨んだところ、特に被害者の証言(公判供述)において客観的状況との矛盾や捜査機関が多分に誘導して供述調書を作成した事実などが、かなり明確に公判に現れる結果となりました。刑事弁護人の最後の仕事は「弁論要旨」といって、証人尋問などを含む全ての証拠を評価した最終的な弁護側の意見・主張を述べることです。上記のような、客観的に確実に認定できる事実の主張、それらと被害者供述との矛盾等を十分に主張した結果、判決は「全部無罪」となりました。

Lawyer Image
島田 敬介 弁護士からのコメント

日本の刑事裁判における無罪率は、0.2%(令和5年日本弁護士連合会による統計)とも言われており、否認事件に限っても、無罪率は2%前後のようです。つまり、被告人が罪を否認していても98%ほどは有罪認定となるわけで、検察官は有罪認定に絶対の自信がある事件しか起訴しません。刑事事件に力を入れていらっしゃる弁護士さんでも、実際に無罪判決を取った経験のある方はかなり限られているかと思います。民事刑事問わず、どのような事案でも共通するところですが、この事案でも、依頼者(被告人)の話をよく聞き、事実を一つ一つ丁寧に拾っていくこと、どこまでも論理的な視点を持って主張を積み重ねていくことで、成果が出た事案でした。裁判は、可能な限り万人に受け入れられる結論でなくてはなりませんので、そのために裁判官の判断は(多少語弊があるかもしれませんが)どこまでも論理的なもの(理屈が通っていて、できる限り反論の余地がない内容)でなくてはなりません。ですから、裁判にかかわる弁護士にも、同様に徹底して理屈を突き詰める態度、論理的思考力が要求されると考えております。個人的な意見ですが、このような能力は実務経験で培われる部分も当然あると思いますが、弁護士の元々の性格や思考回路のようなものが少なからず影響するように思います。(自画自賛で恐縮ながら)当職は比較的このような能力に恵まれているように感じており、裁判には自信を持っております。