この事例の依頼主
30代 男性
ある30代男性が、16歳未満の女性と性交渉をしてしまったということで相談に来られました。彼は、マッチングアプリで知り合った16歳未満の女性にお金を渡して性交渉をし、その後も、同じ女性と何度か会っていたのですが、ある日、「親にバレた」という連絡があったきり、全く連絡が取れなくなってしまいました。男性は、親が警察に通報したのではないかと心配しています。法改正により、性交同意年齢が16歳以上になり、16歳未満との性交渉は、それだけで不同意性交罪が成立します(ただし、相手が13歳以上である場合は、5歳以上の年齢差がある場合に限ります)。年齢の認識(16歳未満であることの故意が必要)さえクリアできれば、年齢と性交の事実だけで犯罪が成立するため、犯罪の立証が容易なことが多く、被害者が未成年であることから、被害者と加害者の接触を防止するためにも、警察が逮捕に踏み切る可能性が極めて高い犯罪類型です。逮捕を回避するためには、自分から警察に出頭する(自首)といった方針も選択肢に入ります。そのため、弁護士は自首を推奨しましたが、実際、被害児童側に何があったのかは分かりません。もしかすると、男性と会うのが嫌になり、「親にバレた」と嘘をついてブロックしただけで、自分から警察に出頭すれば、やぶ蛇になってしまう可能性もあります。男性は、色々な可能性を考慮した上で、依頼するかを保留し、いったん持ち帰ることになりました。
ところが、そのたった1週間後、男性は逮捕されてしまいました。実際、親にはバレており、親が警察に通報していたようです。急ぎ、警察署へ接見に行き、弁護人になり、両親と示談書を取り交わした結果、なんとか不起訴になりましたが、逮捕・勾留を避けられなかった後悔が残りました。
本件のように、女性側の動きが分からない場合、自首や弁護士への依頼に踏み切れないことが珍しくありません。女性側から「訴える」と言われていたり、警察から呼び出しを受けている場合であれば、女性の意思は明白ですが、単に女性と連絡が取れなくなって、もしかすると、警察に相談しているかもしれないという状況では、方針が決め難いのが現実です。仮に、不同意性交や不同意わいせつに該当する事実があったとしても、女性側に被害申告の意思がないのに、こちら側から示談の申入れを行うのは、非常識という考え方もあります。しかし、少なくとも、女性が16歳未満で、年齢だけで犯罪が成立するような場合は、自首や示談の申入れを積極的に検討した方が良い場合もあります。16歳未満の場合、その子に被害申告の意思があるかは重要ではありません。たとえ、本人が望んで性交渉をしたとしても、若年者を保護するというのが法律の目的だからです。また、成人に対する不同意性交等と異なり、16歳未満であることの認識さえクリアすれば、年齢と性交の事実だけで犯罪が成立するため、犯罪を証明することが容易なケースも多く、たとえ発覚が、1年後でも、2年後でも、逮捕される可能性があります。したがって、本件のようなケースでは、たとえ女性側が警察に相談していない可能性があったとしても、逮捕や実名報道を避けるためには、自首や示談の申入れを積極的に検討した方が良いと言えるでしょう。