この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
妊娠38週目だったご相談者様は、早朝に心窩部痛、背部痛、胃もたれの症状が出現したため、かかりつけの産科に架電しました。電話に出た助産師は、産科の受診ではなく、内科を受診するように勧めました。ご相談者様は、指示通りに内科を受診して自宅で休んでいましたが、体調が改善しなかったことから、午後9時にかかりつけの産科を受診しました。診察の結果、胎児機能不全と診断されて、胎児に危険が及んでいることから緊急帝王切開が実施されましたが、生まれた赤ちゃんには重度脳性麻痺・知的障害の後遺症が残りました。早朝のうちに産婦人科医に診てもらっていれば赤ちゃんに重度脳性麻痺や知的障害の後遺症が残らなかったのではないかと疑問を抱き、ご相談・ご依頼されました。
解決への流れ
相手方病院との裁判外交渉で約1億9000万円の和解が成立しました。
担当弁護士は、ご相談者様がかかりつけの産科に架電した時点で、心窩部痛、背部痛の訴えがあったのであればHELLP症候群を疑える状況にあったのだから内科医ではなく、産婦人科医が診察するように対処すべきであった点に過失があると考えました。また、診療録等を精査したところ、医療機関側が再発防止対策を検討していることから、裁判を提起しなくても裁判外の交渉での解決の可能性が十分にあると判断しました。そもそも、医療紛争では、過失・因果関係をめぐって、激しい医学・科学論争になるため、裁判外での交渉では解決できないケースが多いのですが、医療機関側に真摯な姿勢が見られる場合は裁判外の交渉のほうが解決しやすいことも少なくありません。仮に、本件で裁判を提起していたら、相手方病院側の態度を硬化させて相手方病院側の担当弁護士の方針によっては徹底的に争われて数年におよび医療裁判になっていたかもしれません。そう考えると、患者側の代理人弁護士における初動の方針は極めて重要だといえます。