この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
何ら異常なく生まれた生後3日の児が、新生児室で管理されており、看護師によってミルクが与えられました。その際、児が啼泣し、げっぷが出なかったため、看護師は児を側臥位にしてその場を離れました。約30分して児が泣き止んだことに気付いた看護師は新生児室に戻ったところ、児はうつ伏せとなっており、呼吸停止、チアノーゼを呈していました。その後、鼻腔からミルクの様なものが排出しました。児に対して治療が実施されましたが、低酸素脳症となり、脳性麻痺の後遺症を残すことになりました。ご相談者様は、周産期管理ミスがあったことについて相手方病院に責任を追及したいとして、ご相談・ご依頼されました。
解決への流れ
相手方病院に対して医療裁判を提起したところ、裁判官の判断においても相手方に責任があることを前提にすすめられ、産科医療補償制度から得た金額を含めて約1億7000万円で裁判上の和解が成立しました。
本件は、ご相談者様が弁護士法人ALGに依頼される前に前任弁護士によって相手方病院に対して医療調停の申立てをしており、長期間にわたって話し合いが行われましたが、相手方病院は責任を認めずに解決に至っていませんでした。当事務所に依頼後は、看護師が新生児にミルクを与えてから側臥位した後に30分もの間、まったく見守りをしなかったことに問題があると考えて、見守り義務違反があったと主張して裁判で解決すべきと考えました。そこで、医療調停を不成立にして医療裁判に移行することにしました。裁判で相手方病院からは、児が元気でハイリスク児ではないことを理由に、見守り義務がないとの主張がなされました。当方は、児がハイリスク児であったか否かということ自体が問題ではなく、たとえ元気な児であったとしても、ミルクを飲ませてげっぷが出ない状況で、側臥位にしてその場を離れたという事実から、気管を詰まらせたり、ミルクを吐き出したりするおそれが存在したのであり、そのために見守り義務があることを主張しました。また、相手方からは因果関係についても争われて、ALTE(乳幼児突発性危急事態)であり、脳性麻痺となった原因が不明であることから責任がないと主張してきました。これについても当方は、本件は状況からしてミルクによる窒息あるいは気道閉塞が生じた蓋然性が高く、このために脳性麻痺の後遺症を残すことになったと主張しました。審理の結果、看護師が児を本件の状況下で側臥位にした後、30分間その場を離れていたことに問題があったとして相手方病院に責任があるとして、裁判官が事実上患者側の勝訴を示唆する心証を開示して進めれたことにより、高額の賠償金を獲得することができました。