この事例の依頼主
40代 男性
以前にも受任した方からの接見要請でした。自動車運転をめぐる暴行事件で逮捕された件でしたが、依頼者によれば、自称被害者の側から煽られ、信号で停止した際に前に回り込まれて挑発されたため、思わず挑発に乗って車を降り、相手を車から出そうとしたという事件でした。自称被害者は、煽っておきながら110番通報し、さも自分が被害者であるかのように被害申告したとのことです。依頼者は、通報されたのをみて、逃げるのではなく警察官が臨場するのを待つことにし、路肩に車を停めて20分間待機していました。しかし、執行猶予中だったこともあり、弁解も聞いてもらえず逮捕されたという事案です。
相談者はお金がないことから、最初は当番弁護士を呼びました。しかし当番弁護士は、相談者が執行猶予中であることから、被害者に相当の落ち度がありながらも、実刑確実だと決めつけました。そして、勾留されるまでやることはないと述べ、受任しなかったという事件です。さらに当番弁護士は、勾留された後は被疑者弁護人として対応するが、その場合は被害弁償をしたほうが良いと相談者に対して助言しました。相談者としては、自分よりも被害者からけしかけられたのに、被害弁償に応じなければならないのかと悩んでいました。受任後、話を聞いたところ、ドライブレコーダーがあることがわかりました。ドライブレコーダーは警察も確認したとのことでしたが、暴行の場面が写っていたため逮捕されたとのことでした。が、本人の供述から、暴行よりも前の場面が重要であると考えたため、その点を勾留尋問の際に十分確認するよう意見書にまとめました。さらに、捜査官の尋問から推測される被害者の主張を弾劾しました。結局、勾留請求は却下され、検察官も準抗告をしませんでした。
はっきり言って当番弁護士の能力不足で、あやうく被疑者が長期間勾留されるという不利益を受けるところでした。当番弁護士も私選で受任した弁護士も、やることは変わらないはずです。ただ、当番弁護士は選ぶことが出来ません。今回は、証拠が十分残っていたことと、迅速に対応することが出来たおかげで、身柄拘束は一晩で済んだという成功事例でした。