この事例の依頼主
男性
相談前の状況
相談者は、衛生用品の外回り営業に勤めていた。一日あたり長い日は8時間以上外回り営業に出ることがあったが、会社からは、「当社は事業場外みなし労働時間制を採用しており、外回りが8時間以上あったとしても残業代は発生しない」「8時間で帰って来れないのは従業員の努力不足」との理由で、残業代の支払いが一切なかった。
解決への流れ
弁護士に相談したところ、事業場外みなし労働時間制が有効となる要件に、「事業場外での労働者の労働時間の把握が困難であること」という要件があるが、通信技術の発展・普及により、携帯電話・スマートフォンなどで労働者とコミュニケーションを取ることで労働時間の把握を行うことは可能である。そのため、労働者の代理人に就任し、労働審判を申し立て、事業場外みなし労働時間制は要件を満たしておらず無効であり、残業代の支払いが必要であると主張した。労働審判では労働者の主張が認められ、会社が労働者に未払い残業代150万円を支払う内容の和解が成立した。
現場仕事や外回りの仕事の場合、事業場外みなし労働時間制を採用している会社は珍しくない。上に述べたように、事業場外のみなし労働時間制が有効となる要件に「労働時間の把握が困難」というものがあるが、スマートホンなどデジタル通信機器の発展・普及はめざましく、離れている人とコミュニケーションを取ることも、位置を把握することも簡単になってきており、労度時間の把握が困難というのは認められにくい状況になっている。