この事例の依頼主
女性
相談前の状況
相談者は、サービス業のパートタイマーとして労務の提供を行っていた。当該企業のパートタイマーの時給は、午後1時から午後8時までが900円、午後8時から午後10時までが1100円、午後10時から翌午前5時までが1500円、とされていた。雇用契約書はなく、就業規則も備え置かれていなかった。給与明細には、時間外割増賃金、深夜割増賃金の項目はあるが、時間数の記載はなく、金額の記載もなかった。相談者は、意を決して割増賃金の支払いについて問い合わせたところ、支払い済みの時給に含まれているとの回答で、支払いを拒絶された。
解決への流れ
相談者の代理人に就任し、会社に対して、雇用関係に関する資料の開示を求めた。契約書、就業規則はなく、給与明細の開示のみが得られた。割増賃金の支払いと認められるためには、当事者間である手当が割増賃金として支払われるものであるとの合意が存在する必要があるが、本件ではそれが存在しないと判断。計算した残業代を請求したが、相手方は支払いを拒んだので、労働審判を申し立てたところ、第1回目の審判期日で和解が成立し、請求どおりの残業代が支払われた。
相手方に弁護士の代理人が就かなかったため、相手方企業の制度のもとでは時間外割増賃金、深夜割増賃金の支払いがあったことにはならない、という点に関する納得を得るのに少々時間を要した。法律専門家からみれば当該支払いが割増賃金として支払われているものといえるのか明確な判断が得られるので、疑問のある方はぜひ一度相談していただきたい。