この事例の依頼主
70代 女性
相談前の状況
相談者は,自分の財産をどのように運用していくのかについて,強い思い入れがありました。自分で財産管理できなくなってしまった場合に備えて,任意後見契約を行っておき,自分が信頼できる後見人を設定できるようにしました。
解決への流れ
認知症などで判断能力がなくなり,親族などの申立で成年後見人が選任される場合,申立人が推薦した候補者が成年後見人に選任されることがあります。そうではなく,家庭裁判所が,利害関係のない弁護士などを成年後見人に選任することもあります。特に,親族間で請求するものがあるなど,トラブルが生じる可能性がある場合には,申立人が推薦した候補者はなかなか選任されず,利害関係のない弁護士などが成年後見人として選任されることが多いと感じます。もちろん,任意後見契約を締結したからといって,必ず任意後見契約を締結した人が後見人に選任されるとは限りませんし,任意後見契約を締結した場合でも,後見監督人が選任されることになりますので,監督は受けることになります。今回の事例では,「自分が信頼できる方に後見人をお願いしたい」という相談者の要望に応じ,直接的に財産管理などを行っていただく方を任意後見契約により後見人として設定することとしました。
成年後見の分野では,近年,本人の意思を尊重するという方向性が徐々に強まってきています。任意後見契約により,自分がもともと信頼できる方を後見人とすることができれば,判断能力を失う前の,自分の考え方を,将来の後見人によくわかっておいてもらえます。自分が判断能力を失ってしまう前に,自分の信頼できる方に後見人をお願いするという任意後見契約を,将来の財産管理の選択肢の1つとしてご検討いただければと思います。