犯罪・刑事事件の解決事例
#詐欺 . #加害者

【無罪判決】総額約9000万円の詐欺事件(起訴分5000万円)で無罪判決を取得した事例

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

30代 男性

相談前の状況

本件は、①大手都市銀行が関与している海外の学校建設に絡み、投資した金額が倍になってくると被害者を騙して、3000万円を詐取したとされる詐欺事件②大手クレジット-カード会社のブラックカードを作成する費用であると騙して1200万円(400万円の3枚分)を詐取し、また、海外の学校建設に絡む投資話の追加投資として800万円の合計2000万円を詐取したという詐欺事件であった。2016年に一度、逮捕された後、不起訴になった後、2017年に被疑事実を変えて再度、逮捕・勾留→起訴された事案である。

解決への流れ

当職は、被疑者段階、被告人段階において、私選弁護人として弁護活動をした。争点は、騙されたことを主張している被害者の証言の信用性であった。被害者の供述調書についてはすべて不同意とし、また、被害者の供述に沿う供述をしている関係者の供述調書についても不同意とした。①被害者、②被害者の夫、③関係者A、④関係者Bの4名の証人尋問を行った。被害者は、主尋問においては、被害者の供述調書をなぞるような供述をしていたが、弁護人側の反対尋問においては、従来、供述をしていたこととは違うことを供述し始めた(供述の変遷)。また、被害者が被告人に交付した資金(詐取されたとする資金)の出所については、従来よりタンス預金ということを主張していたが、タンス預金の保管場所についての供述も被害者の供述調書で述べていたことと違うことを述べ始めた(矛盾点を突かれて、従来の話を維持できなくなってしまったものと思われる。)。さいたま地方裁判所(平成31年2月15日)は、被害者の証言の信用性を認め、被告人に対して懲役4年6月の有罪判決を下した。当職は、原審の判決に対して控訴を申し立てたところ、東京高等裁判所は、被害者の証言が信用できないとして、被告人に対して逆転無罪判決(令和元年9月27日)を下した。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

本件では、被害者の証言の信用性が大きな争点となりました。被害者に対して被告人が行った詐欺行為(騙す行為)があったのか、被害者から被告人に対して金銭の交付があったのかについて、被害者の証言を裏付ける客観的証拠があるのかということが証言の信用性判断に影響を与えた事件です。被害者には、約1億円ほどのタンス預金があり、この1億円のタンス預金の中から被告人に対して、総額で5800万円を渡したと証言をしていましたが、タンス預金については、一切の客観的な裏付けがありませんでした。しかも、タンス預金を形成したのは、若い時から風俗で7000万円稼いで、覚せい剤の密売で3000万円稼いだなどと証言をしておりました。被告人に交付した資金の形成過程について、社会通念に照らしても信用できない事案でした。経験則に従って、「普通は、○○である」、「今回は普通のことの成行きではないが、○○という理由があったからだ」という経験則を積み重ねて証言の信用性を判断をすることが重要だと改めて再認識することができた事件でした。