この事例の依頼主
20代 男性
Aさんは、都内の製造メーカーに勤める20代の男性でしたが、大学生の頃からの友人の誘いで覚せい剤を使用してしまいました。当時、Aさんは両親と同居をしていましたが、自宅に帰ったAさんの様子がおかしいことに気付いて、両親がAさんを追及したところ、Aさんは、覚せい剤を使ったことを白状しました。両親に自首をすることを勧められましたが、自首をしたら刑務所に入らなければならないのではないかなどといろいろなことが頭を巡り自首をすることはできませんでした。覚せい剤を使用したときの注射器は自分が使っている車の中に隠していました。両親に覚せい剤使用が発覚して以降、両親が警察に話をしたらどうしようであるとか、外を歩いていても交番の前は通れないなど、Aさんは精神的に追い詰められてしまい、うつ状態になってしまいした。Aさんとしては素直に自首をした方がよいのではないかと思い立って、近くの警察署に自首しました。警察では、尿検査をすることを求められたので、尿検査を実施しましたが、覚せい剤を最後に使ってから自首するまでの間にある程度の日数を要していたため、Aさんの尿からは覚せい剤の成分が検出されることはありませんでした。 警察に車に隠していた注射器を任意提出したところ、注射器の中に覚せい剤入りの水溶液が微量であるが発見されました。Aさんは覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕・勾留されることになりました。今後どうなるのかについて、不安に思ったご両親が当職のところに相談にお越しになられました。
Aさんの「逮捕事実」は覚せい剤の「所持」でした。それが発覚したのは、Aさんが自ら警察に自首をしたことがきっかけです。Aさんには、今までに前科・前歴はありませんでした。覚せい剤入り水溶液が入った注射器についても、自らが任意提出していますし、注射器内に残存していた水溶液の量も微量でした。上記の事情から当職としては不起訴処分を求めることができるのではないかと判断し、不起訴処分に向けて弁護活動をすることを開始しました。まず、当職は、前述した事実関係に加えて、Aさんが取調べにおいても素直に捜査に協力していること及びAさんには良い情状があることを記載した「意見書」を作成し、検察庁に提出いたしました。その後、勾留満期の時点で、Aさんは処分保留のまま釈放されました。それからも、当職は検察官に対し、Aさんの不起訴処分を強く働きかけたところ、最終的に、不起訴(起訴猶予)処分ということになりました。
覚せい剤については、安易な気持ちで手を出してしまう人が多く、初犯の人の多くは20代の若者です。40代、50代になって覚せい剤で捕まる人の多くは常習的に利用している方が多く、若いうちに薬との関係を断っておく必要があります。刑事事件だけの解決ではなく、長いスパンで薬との関係性を断つ方策をアドバイスできればと思います。