犯罪・刑事事件の解決事例
#横領 . #加害者

【業務上横領事件:執行猶予】3000万円もの業務横領事件において執行猶予を得た事例

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

40代 男性

相談前の状況

オフィス設備関連企業の経理課長を担当していたAさん(48歳)はある日,業務上横領罪の嫌疑で逮捕されてしまいました。Aさんは、会社の運転資金の中から3000万円ほど私的に流用をしていたようです。会社も25人ほどの会社であり、経理担当も3名ほどしかいなかったため、経理担当のトップであったAさんを社長も全面的に信頼をおいていたようでした。Aさんの奥様は、Aさんから一切の話を聞いておらず、突然のことでどうしたらよいのかわからなかったため、当職のHPを見て法律相談にお越しになられました。経済事犯においては、被害回復が弁護において一番重要です。例えば、100万円の経済的被害が生じた場合には、100万円を返せば経済的な損害は0に戻るわけです。経済犯罪の量刑を定めるときには、被害回復(弁済)をできるかどうかが執行猶予をとれるかどうか、刑を減刑できるかどうかの肝になるわけです。当職の弁護方針としては、本人が業務上横領を認めている以上は、できる限りの被害弁済をし、完済できない部分は被害弁済の合理的な計画を立て、会社との間で被害弁済の合意を得ることが重要であるということでした。奥様は当職の弁護方針に納得をされ、Aさんの刑事弁護人(私選弁護人)に選任されました 。

解決への流れ

依頼を受けた当職は,まず、被害弁済手続きを進めるためには、Aさんを留置場から出してあげる必要があると考え、Aさんが起訴された後すぐに保釈請求を行いました。保釈請求において重要なのは、「罪証隠滅のおそれ」(=証拠を隠したり、壊したりする、あるいは、証人を脅して証言させないようにする)と「逃亡のおそれ」(=刑罰を恐れて逃げてしまうおそれ)という「2つのおそれ」がないということを裏付ける主張・立証をすることです。前者については、Aさんは逮捕される前に会社に対して、横領に関する詳細な資料を提出しており、その資料については捜査機関においても収集済みでした(会社の顧問弁護士が詳細に内部調査をしたうえで、資料を整え、刑事告訴をしたようです。)。そのような証拠があれば、Aさんは言い逃れができませんし、取り調べにおいても警察段階や検察段階でもすべて自白をしておりました。また、今回の事案においては証拠関係上重要な事件でなかったため、証人を脅したりすることも考えられませんでした。また、「逃亡のおそれ」についても、Aさんは、Aさんの両親と奥様と子供2人で生活をしていたことから、父親と奥様に身元引受人になってもらい「身元引受書」を準備しました。さらに、会社についてはクビになってしまったことから、Aさんの両親が経営している自営業(建築会社)の経理の仕事をアルバイトで雇用してもらうなど、生活関係を安定させて逃亡しようなどと思わないような環境づくりをいたしました。そのような事情を踏まえて、保釈請求を行ったところ、保釈請求は認容され,Aさんは家族とともに自宅で過ごすことができるようになりました。奥様は,まずは一安心されていたようでした。本事案では,長期間に渡って横領行為が繰り返されており,被害額も3000万円と高額だったため,被害者である会社との示談交渉が難しいのではないかと予想されました。この示談交渉の成否が,「実刑」(刑務所で更生する)となるか「執行猶予」(社会内で更生する)となるのかの分かれ道でした。当職は,まず、会社の社長さんにお会いをし、Aさんが反省をしていること、社会内での更生のチャンスを与えてほしいということ、会社に与えた損害については必ず、Aさんが返済をするということを伝えました。そうしたところ、社長さんは、長年会社に勤めてくれた人であるから、きちんと対応をしてくれるのであれば話を聞くことは聞くという返事をしてくれました。Aさんは、実家からまず、1500万円を借り受けました。そのうえで、預金としてもっていた300万円、Aさんの奥様の実家から300万円の援助を受けることができました。残りの900万円については、Aさんの実家の建築会社で経理としての仕事をしたうえで、月額15万円×60か月(5年間)で返済をしていくという返済案を作成しました。そうしたところ、Aさんの両親・奥様に連帯保証人になってもらうことを条件として、会社の社長が返済計画を受け入れてくれました。しかも、Aさんを実刑に処することを求めないという「嘆願書」の作成にも協力をしてくれました。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

経済的犯罪においては、被害額が高額であればあるほど示談をすることは非常に難しくなりますし,実刑は免れることは難しくなってきます。そのような場合には,弁護士が適切な示談の条件を作成し、被害者の方に提示することで,交渉をスムーズに進めることができると思われます。依頼者の方にとって最善の結果が得られるためにも,弁護士に依頼されることをおすすめいたします。※当職は、Aさんが「刑務所で更生する」よりも「社会内で更生する」ことが望ましいということを裏付けるために、以下の主張をしました。1 Aさんには更生に協力してくれる妻、子供、父、母という同居の家族がいること2 Aさんには安定した仕事に就くことが決まっていること3 被害者である会社の社長もAさんの社会内での更生を願っている旨の嘆願書を提出していること4 Aさんと会社との間では被害弁済計画の合意が出きており、その計画の実現のためには社会内での処遇が望ましいこと5 横領の温床となっていた夜遊びを自粛することを法廷で誓約しており、金銭管理については、しばらく妻が行うことが決まっていること等を主張・立証しました。そうしたところ,被害金額が3000万円と高額であったにもかかわらず,「実刑」ではなく「執行猶予付判決」で済み,Aさんは社会復帰を果たすことができました。