この事例の依頼主
30代 男性
本件については、国選弁護人が既に選任されている事案でした。ご家族がご本人の状況や弁護方針について知りたいのだけれども、国選弁護人からきちんとした報告がなく、心配であるという相談があったことから、「弁護人になろうとする者」ということで被告人に接見しました(当職に相談があったときには既に起訴後でした。)。当初、オレオレ詐欺が暴力団が絡む犯罪であり、組織的犯罪であることから被告人に接見禁止処分が付されておりました。(※「起訴前に接見禁止がついていても、起訴後は取れる」というのが、かつての刑事弁護の常識と言われておりました。しかし、現在は、起訴後の接見禁止は明らかに増加しています。)国選弁護人が接見禁止処分の解除の申し立てもしていなかったことから、ご家族が国選弁護人に対して不信感を抱くことになったことから、当職が受任をすることになりました。
当職が私選弁護人として受任後、すぐに裁判所に接見禁止処分の一部解除の申立てを行いました。家族と本人と会うことを早急に進める必要があると思ったからです。そうしたところ、裁判所がこれを認めたため、ご家族と被告人本人と面会できるようになりました。ご家族としては、本人の状況を知ることが希望であったため、本人から直接お話しを聞くことができてとても安心したようでした。被告人本人は、暴力団組織に利用されて、他にも多くの犯罪に手を染めていることがわかりました。そのため、起訴後も検察庁に何度も呼ばれて取り調べを受けていましたが、当職が頻繁に接見に行き検察庁の取り調べに対する対応策を具体的にアドバイスしました。刑事事件においては、「捜査段階で検察官(+警察)が集めた証拠を裁判段階で吟味する」ことになるので、捜査段階の検察官(+警察)の取り調べに対する対応がとても重要なポイントになってきます。被告人に当職のアドバイスに従って取り調べに応じてもらった結果、検察としても余罪については、嫌疑が不十分であると判断をしたのか、再逮捕されたり、追起訴されることはありませんでした。起訴された部分については、①公判の当初から素直に罪を認めたこと(=反省をしており、再度犯罪を起こすことは ないということを理解してもらう)②被害者に対する反省文を書いたこと(=反省をしており、再度犯罪を起こすことはないということを理解してもらう。⇒一回書くのでは意味がありません。何回も書くことによって自身を省察してもらう必要があります。)③父親(母親は傍聴席に来てもらいました)が情状証人として立ってくれたこと(=被告人のことを一番心配している家族が被告人の更生のために力を貸してくれること)④贖罪寄付をしたこと(=詐欺で不正に得られた利益を社会に戻すことによって、違法な利益を吐き出したこと)⑤就職先を面倒見てくれる人を探したこと(=生活において重要な仕事についてもきちんと確保されていること。社会内での更生の環境が整っている。)⑥オレオレ詐欺の撲滅のために捜査に全面的に協力したこと⑦暴力団組織と手を切ることを確約したこと(=犯罪に関与することになる悪い環境から自分を切り離したこと)などを主張・立証し、「刑務所で服役をする」(実刑)よりも「社会内で更生する」(執行猶予)ことの方が望ましいという判断をしてもらうように尽力をしました。それを裁判所が肯定的に考慮してくれた結果、執行猶予判決を獲得することができ、刑務所に収監されることを避けることができました。
刑事事件において、国選弁護人が選任されている事件であるにもかかわらず、ご家族から当職に相談があるというケースはよくあります。そのときのご家族の不満は、「弁護士が家族にぜんぜん会ってくれない」、「接見にあまり行ってくれない」、「弁護方針がわからないし、何をしているのか疑問がある」、「保釈請求を全然してくれない」など気がかりな点があれば、セカンドオピニオンとして他の弁護士に相談をすることをお勧めします。多くの場合には、国選弁護人の判断が合理的であり、きちんと仕事をしていることが多いのですが、そうでない場合もありますので、念のためにもきちんと相談をされた方がいいかと思います。また、刑事弁護は3つの弁護のパターンがあります。(1)犯罪を行ったのか?(有罪)、それとも、犯罪犯していないのか?(無罪)(2)罪を償うことや更生するのを社会内で行うのか?(執行猶予)、それとも、刑務所内か?(実刑)(3)刑務所で刑に服役するとして、どの程度の長い刑期にするのか?(量刑の問題)です。これらについては、どのようなことを主張・立証することが大事なのか??というポイントがあります。そのポイントについて、被告人だけではなくご家族とも協議をして、被告人にとってベターな結論に導くのが刑事弁護人のお仕事です。当職は、刑事弁護のポイントがどこで、どうしてそれが重要なのかをきちんと説明をして、そのうえでご家族と協議のうえで弁護活動を進めていきます。不明な点は何度でも聞いてください。それを聞くのは弁護人の仕事なわけですから。