この事例の依頼主
50代 男性
相談者は所沢市内で整骨院を経営しておりました。平成19年2月頃から12月頃までの間、当時、整骨院で働いていた従業員と示し合わせて、複数回に渡り、実際には同院で施術をしていない所沢市の女性の国民健康保険証を使って同市に国民健康保険療養費支給申請を行い、療養費をだまし取った疑いを警察にもたれました。報道ベースでは、被害総額が6000万円にも上るという話になっておりました。
被疑者のご家族からの依頼を受けて、事件を担当をさせて頂くことになりました。接見にこまめに行くことで警察がどのような意図をもって取り調べを進めているのかを把握することに努めました。刑事裁判は、【捜査段階で捜査機関が集めた証拠】を【公判(裁判)段階で吟味をする】という構造になっていますから、捜査段階で捜査機関がどれだけの証拠を集められるかが重要になってくるわけです。その際に大きいのは、「検察官面前調書」を言われる検察官が作成した取り調べの調書です。もちろん裏付け証拠も大事ですが、この調書上にどのような記載がなされるかということが重要になってきます。捜査段階に弁護人を付ける大きな意味は、【検察官面前調書に犯罪事実の認定上、被疑者・被告人に一方的な不利な事実が記載されないようにする(捜査対応に対するアドバイス)】ということにあります。通常であれば、詐欺事件等の捜査の専門であるいわゆる捜査二課が担当するはずの事件でしたが、被疑者の属性から公安が捜査を担当していたようです。当職がこまめに被疑者・被告人と接見を重ねて被疑者・被告人と打ち合わせを重ねた結果、警察が意図するとおりの供述を得られなかったためか、実際に立件された被害金額は報道ベースよりもかなり少ない金額で済むことになりました。また、被害者である所沢市との交渉を重ねて被害弁済をスムーズにすることができました。
経済事犯において被疑事実に争いがない場合には、(1)保釈を得ること、(2)執行猶予を取ることが主眼になってきます。本件においては、保釈を得ることができましたし、また、執行猶予も取ることができました。執行猶予がとれるかどうかのポイントは、被害弁済をすることで実質的な経済的損害を填補することができたかどうかが重要です。そのため、早期に被害者と交渉をし、被害弁済に努めることができた点が今回のケースにおいて執行猶予を勝ち取れたポイントであろうかと思います。