犯罪・刑事事件の解決事例
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【覚せい剤自己使用・無罪】 覚せい剤自己使用罪について証拠の採取過程に違法がある「無罪判決」

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

50代 男性

相談前の状況

当初、公務執行妨害罪の被疑事実で現行逮捕された被疑者のところに、国選弁護事件として接見に行ったところ、話を聞くと、喧嘩をしていたら近所の人に通報されたので、相手方を車に乗せて、車に乗って逃げたところ、多数のパトカーに追われることになり、相手方を途中で車から降ろして逃げ続けたところ、対抗車線から来たパトカ―が進路を塞ごうとして走行車線に入ってきて、パトカ―をぶつけてきたという話でした。これは公務執行妨害ではないなあと思い、現行犯逮捕手続の要件を満たしていないと判断をしました。違法な現行犯逮捕によって身柄拘束されている間に、被疑者に過去に覚せい剤の使用の経歴があったことから、尿検査をしたところ、覚せい剤反応が出たというとのこと。公務執行妨害罪では不起訴処分になったが、覚せい剤自己使用罪では起訴されました。

解決への流れ

覚せい剤自己使用罪を裏付ける証拠としては、尿の鑑定書がメインであったことから、尿の鑑定書を作成するにあたって採取した尿の採取が違法な現行犯逮捕による身柄拘束を利用して行われたものであるから、尿の鑑定書は違法収集証拠であるから、証拠能力がないと主張し、約1年程度、原審で争いました。※「証拠の採取のプロセスに違法がある場合にはその証拠を使ってはいけない!」というルールを違法収集証拠排除法則といいます。逮捕の現場にいた警察官も4人ほど証人尋問をしましたが、不都合な事実を突かれたからなのか法廷で怒りだし、不自然な供述をしておりました。実況見分調書もよく吟味したところ、実況見分調書の写真に手掛かりがあり、裁判所も当方の主張を受け入れてくれ、原審で違法収集証拠排除法則が適用され、尿の鑑定書が証拠能力を欠くと判断されました。そうすると、覚せい剤自己使用罪を裏付ける証拠が被告人の自白しかないことから、補強法則(「いくら自白があったとしても、自白の内容を裏付ける客観的な証拠がないと有罪にできない」というルール)に基づいて、無罪判決が下されました。検察官による控訴がなされましたが、東京高等裁判所でも控訴棄却が言い渡され、無罪が確定しました。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

刑事事件の有罪率は99.9%と言われておりますので、無罪判決というのは珍しい事案でした。特にそのなかでも「違法収集証拠排除法則」(「証拠の採取のプロセスに違法がある場合にはその証拠を使ってはいけない!」というルール)を適用した形で無罪になるのは珍しいということができます。刑事裁判においては事実認定がすべてです。事実を裏付ける証拠を丹念に吟味し、「普通であればあるはずのものがない」とか「普通であればないはずのものがある」等の経験則をはたらかせて、事実として何があったのかを虚心坦懐に吟味することが重要です。当初、無罪を争うことでいわゆる業界用語でいう「否認料」(否認をすると反省していないということで刑が重くなること)を取られるのではないかという不安もありましたが、被告人の言葉を信じて最後まで戦ったことで得られた成果であると思います。