この事例の依頼主
50代 男性
依頼者は2件のイタリアンの飲食店を経営する中小企業(A社)の社長さんでした。コロナ禍の中でお客さんがお店に来なくなり、人件費や賃料(月額55万円)だけがかさむことから、1件お店を閉めることにしました。ビルのテナントに入っておりましたが、ビルのオーナー会社と撤退について協議をしたところ、「今回の賃貸借契約は、定期借家契約であるから、あと、4年間はテナントとしていて貰わなければ困る。4年分の賃料を全額支払ってくれるのであれば、出て言ってもいい」と言う話をされました。4年分の賃料となると、2500万円を超える金額を支払う必要が生じることから、どのように対応をしたらよいかわからずに、当職のところに相談にお越しになられました。
社長からの相談を受けて、早速、当職は、社長から今回の件について受任をして交渉をすることになりました。まずは、受任通知を送付して、ビルのオーナーの会社と話をすることになりました。当職としては、「コロナ禍の中で、これ以上の賃料を支払っていくことは難しい。A社が撤退しても、他のテナントが入れば、賃料を得ることはできるのであるから、損害がないではないか。一定の違約金は支払うので撤退をさせてほしい」という話をしました。その上で、「A社としては、遅くても半年後には出て行くことを決めているから、新しいテナントの募集を今からすぐにでも初めて欲しい」と言う話をしたところ、A社のテナントからの撤退の強い意思を感じ取ったのか、オーナー会社は弁護士を付けてきました。弁護士が付いたあとは、オーナー会社としても、オーナー会社側が損をしない形での合理的な撤退計画であれば、協議に応じるという姿勢に変わりました。最終的には、新しいテナントを探すための猶予期間分の賃料である6カ月分の賃料(360万円程度)+敷金を放棄するという内容で合意をすることができ、コロナ禍の中で1つの店舗を整理することができました。
コロナ禍の中で、飲食店はかなりの打撃を受けている状況です。テナントから撤退をして事業を再建しようとしても、オーナーが賃料の減額や撤退にかかる違約金などを主張して、飲食店の撤退をすることは難しいと言う事案が増えております。オーナー側のも損にならず、テナント側にも損にならない合理的な撤退策を考えれば、協議による解決を図れる場合があります。まずは、弁護士に相談をしてどのような解決が可能であるのかを検討してみてください。