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日本と台湾では判例が違う? 「アダルトビデオ」に著作権はあるか
2013年03月30日 22時15分

「台湾ではアダルトビデオには著作権がない」。サイト『フォーカス台湾』によると、台湾のポルノサイトがアダルト動画を無断でアップロードしているのは著作権法違反であるとして、日本のAVメーカーが告訴したところ、現地の検察は不起訴とする判断を下したという。

記事によると、台湾の判例では、ポルノ動画は公序良俗に反し、著作権法の対象となる文学・科学・芸術などの著作物に該当しないため、その保護は受けないという。また、モザイク処理を施し、政府の審査で合格して認定を受けたとしても、著作権法の保護を受けることはないという判例もあるそうだ。

今回、台湾の台北地検は、これまでの判例などを考慮して、台湾企業がポルノ動画をネット上で配布しても著作権法違反にはあたらない、と判断したということだ。では、日本では、公序良俗に反するなどの理由で、「アダルトビデオに著作権がない」ということはありうるのだろうか。雪丸真吾弁護士に聞いた。

●アダルトビデオは、著作権法の「映画の著作物」にあたる

「アダルトビデオだから著作権がないという判断は日本ではありえないと思います。アダルトビデオは、著作権法10条1項7号の『映画の著作物』と考えられ、判例でも、これを認めたものが複数あります」

このように雪丸弁護士は述べ、次のような判例をあげる。

「まず、平成11年(1999年)6月29日の東京地裁判決があります。原告はソフト・オン・デマンド株式会社。同社作品のビデオソフトについて、被告が無断で多数の顧客にレンタルしたことが、著作権(映画著作物の頒布権)の侵害にあたると主張して、損害賠償を求めた事案です。ここでは、アダルトビデオが『映画の著作物』にあたることは『争いのない事実』として扱われ、争点になっていません。

もう一つが、平成10年(1998年)10月30日の東京地裁判決です。原告は複数のAVメーカーで、アダルトビデオの無断複製物を販売していた被告を訴えたケースでした。映画著作物の頒布権に基づいて、原告作品のアダルトビデオの『複製』や、複製したビデオテープの『頒布』、頒布目的による『所持』の差止めなどを求めました。この事案について、裁判所は原告作品のアダルトビデオが『映画の著作物』にあたることを認定しています」

●一般に流通しているアダルトビデオは、公序良俗違反とまではいえない

このように判例を紹介したうえで、次のように説明を加える。

「民事訴訟では、裁判所は当事者の主張に拘束されますので、『アダルトビデオは公序良俗に反するから著作権がない』と、被告が主張しなかったから、裁判所もあえてその点は判断しなかった、という面はあるかもしれません。

仮にそうだったとしても、少なくとも被告側が、『アダルトビデオは公序良俗に反するから著作権がない』などという主張は到底認められないだろう、と判断したのだとはいえます。それは、常識的な判断だったと思います」

なぜ「常識的な判断」だといえるのだろうか。雪丸弁護士の答えは次のようなものだ。

「アダルトビデオが公序良俗違反にあたる場合とは、具体的には過度にわいせつであることと思われます。この点、一般に流通しているアダルトビデオは、わいせつ物頒布等の罪(刑法175条)への配慮を必ず行っているはずなので、過度のわいせつ性は排されていると考えられます。

また、公序良俗違反で著作権を否定することは、表現の自由(憲法21条)を侵害する恐れがあるので、裁判所は消極的にならざるを得ないと思われます。以上の点から、『アダルトビデオは公序良俗に反するから著作権がない』という主張は、日本の裁判所では認められないと考えられるのです」

どうやら台湾では認められていないとみられる「アダルトビデオの著作権」も、日本ではしっかり認められているといえそうだ。台湾のニュースを見て、「日本でもアダルトビデオを無断でアップロードしても大丈夫」と早合点するのは危険ということだ。

(弁護士ドットコムニュース)

「台湾ではアダルトビデオには著作権がない」。サイト『フォーカス台湾』によると、台湾のポルノサイトがアダルト動画を無断でアップロードしているのは著作権法違反であるとして、日本のAVメーカーが告訴したところ、現地の検察は不起訴とする判断を下したという。

記事によると、台湾の判例では、ポルノ動画は公序良俗に反し、著作権法の対象となる文学・科学・芸術などの著作物に該当しないため、その保護は受けないという。また、モザイク処理を施し、政府の審査で合格して認定を受けたとしても、著作権法の保護を受けることはないという判例もあるそうだ。

今回、台湾の台北地検は、これまでの判例などを考慮して、台湾企業がポルノ動画をネット上で配布しても著作権法違反にはあたらない、と判断したということだ。では、日本では、公序良俗に反するなどの理由で、「アダルトビデオに著作権がない」ということはありうるのだろうか。雪丸真吾弁護士に聞いた。

●アダルトビデオは、著作権法の「映画の著作物」にあたる

「アダルトビデオだから著作権がないという判断は日本ではありえないと思います。アダルトビデオは、著作権法10条1項7号の『映画の著作物』と考えられ、判例でも、これを認めたものが複数あります」

このように雪丸弁護士は述べ、次のような判例をあげる。

「まず、平成11年(1999年)6月29日の東京地裁判決があります。原告はソフト・オン・デマンド株式会社。同社作品のビデオソフトについて、被告が無断で多数の顧客にレンタルしたことが、著作権(映画著作物の頒布権)の侵害にあたると主張して、損害賠償を求めた事案です。ここでは、アダルトビデオが『映画の著作物』にあたることは『争いのない事実』として扱われ、争点になっていません。

もう一つが、平成10年(1998年)10月30日の東京地裁判決です。原告は複数のAVメーカーで、アダルトビデオの無断複製物を販売していた被告を訴えたケースでした。映画著作物の頒布権に基づいて、原告作品のアダルトビデオの『複製』や、複製したビデオテープの『頒布』、頒布目的による『所持』の差止めなどを求めました。この事案について、裁判所は原告作品のアダルトビデオが『映画の著作物』にあたることを認定しています」

●一般に流通しているアダルトビデオは、公序良俗違反とまではいえない

このように判例を紹介したうえで、次のように説明を加える。

「民事訴訟では、裁判所は当事者の主張に拘束されますので、『アダルトビデオは公序良俗に反するから著作権がない』と、被告が主張しなかったから、裁判所もあえてその点は判断しなかった、という面はあるかもしれません。

仮にそうだったとしても、少なくとも被告側が、『アダルトビデオは公序良俗に反するから著作権がない』などという主張は到底認められないだろう、と判断したのだとはいえます。それは、常識的な判断だったと思います」

なぜ「常識的な判断」だといえるのだろうか。雪丸弁護士の答えは次のようなものだ。

「アダルトビデオが公序良俗違反にあたる場合とは、具体的には過度にわいせつであることと思われます。この点、一般に流通しているアダルトビデオは、わいせつ物頒布等の罪(刑法175条)への配慮を必ず行っているはずなので、過度のわいせつ性は排されていると考えられます。

また、公序良俗違反で著作権を否定することは、表現の自由(憲法21条)を侵害する恐れがあるので、裁判所は消極的にならざるを得ないと思われます。以上の点から、『アダルトビデオは公序良俗に反するから著作権がない』という主張は、日本の裁判所では認められないと考えられるのです」

どうやら台湾では認められていないとみられる「アダルトビデオの著作権」も、日本ではしっかり認められているといえそうだ。台湾のニュースを見て、「日本でもアダルトビデオを無断でアップロードしても大丈夫」と早合点するのは危険ということだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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