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ペニーオークション詐欺、ブログを書いた芸能人の責任は?
2012年12月20日 16時57分

ペニーオークション詐欺で、サイト運営者の男らが逮捕された。この事件をきっかけに、有名芸能人が実際には落札していない商品をペニーオークションで落札したかのようにブログに書き込み、サイト運営者側から金銭を受け取っていたことが発覚し、社会的な問題となっている。名前が浮上しているのは、タレントのほしのあきさんや、お笑いコンビ「ピース」の綾部祐二さん、モデルの小森純さんらだ。

ペニーオークションとは、入札するたびに手数料がかかる形式のインターネットオークションのことで、運営企業側が中古品ではなく新品を用意することが多く、うまくいけば対象商品を市場価格よりも安く落札できるとされている。しかし、入札して落札できなかった場合でも、費やした入札手数料は返還されないシステムになっているため、実際には高額取引となるケースもある。

今回の運営者が逮捕された事件では、最終的に「ボット」と呼ばれる自動更新プログラムに落札させることで、ユーザーは入札してもほとんど落札することができず、入札手数料が詐取される仕組みになっていた。

実際には落札していないにも関わらず、商品を落札したと芸能人が虚偽の内容をブログに書き込む行為は、消費者(ブログ閲覧者)に誤解を与える可能性が大いにあり、ブログの内容を信じてペニーオークションを利用した人がいるかもしれない。

それでは、これらの芸能人の書き込み内容を信じて不正な仕組みになっているペニーオークションを利用した人は、当該芸能人らに補償を求めることはできるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。

●その芸能人に故意又は過失があったかどうか

「今回、虚偽の書き込みを行った芸能人のブログに影響されて不正なペニーオークションを利用した人は、その芸能人に対して、運営者の詐欺行為に加担した(詐欺行為を容易にするための手助けをした)として、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。」

「芸能人の不法行為責任が認められるためには、(1)芸能人の故意又は過失、(2)権利侵害又は法律上保護される利益の侵害、(3)損害の発生、(4)(1)と(3)の間の相当因果関係の存在が必要となります。このうち本件で主に問題となるのは、(1)の『故意又は過失』の要件でしょう。」

●過去には芸能人の損害賠償責任が認められた事例がある

「過去の先例には、価値のない土地を騙して高値で売りつける『原野商法』という詐欺行為をした会社のパンフレットに、自己のメッセージとして当該会社とその取り扱う商品を紹介・推薦をした芸能人に対する不法行為責任が認められたものがあります(大阪地裁昭和62年3月30日判決)。」

「この事例では、芸能人が商品を推薦することの影響力の大きさや、販売価格が少額でなかったこと、芸能人が販売価格を知っていたことなどの事情が考慮され、芸能人は、広告主の事業に不正があった場合に生じる損害が多額に上る可能性を認識し、必要な調査を尽すべき注意義務があるのにこれを怠った(広告主の事業内容を全く調査しなかった)過失があるとして、芸能人の損害賠償責任が認められました。」

●芸能人に虚偽の宣伝行為に関与している認識があったとすれば、共犯に問われる可能性も

「今回のペニーオークションの例では、報道を見る限り、知人に頼まれてブログへの虚偽の書き込みを行った時点では、芸能人がオークション運営者の詐欺行為を認識し、あるいは認識しえる状況にあったようには見受けられませんので、その意味で芸能人と運営者との関係は非常に間接的で、芸能人が運営者の事業内容を調査しなかったとしても、利用者に対して賠償義務責任を負う可能性は低いと思われます。」

「しかし、芸能人がブログに虚偽の書き込みをするにあたり、何らかの詐欺に関わる可能性があるという認識をもっていたとすれば、運営者の詐欺行為に加担した、あるいは書き込み前に十分な調査をすべき注意義務を怠ったとして、芸能人の利用者に対する損害賠償責任が認められる可能性が出てくるでしょう。また、芸能人に運営者による虚偽の宣伝行為に関与している認識があったとすれば、『人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした』として、軽犯罪法違反の共犯(同法1条34号、3条)に問われる可能性はあります。」

この問題が発覚して以後、関わったとされる芸能人について日に日に新たな名前が報道されるなど、世間の関心は依然として高い。

各芸能人に運営者の詐欺行為に加担する意図が全くなかったとしても、結果的にファンを巻き込んでしまうようなことにならないよう、芸能人にはブログに書き込む内容にも充分注意していただきたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

ペニーオークション詐欺で、サイト運営者の男らが逮捕された。この事件をきっかけに、有名芸能人が実際には落札していない商品をペニーオークションで落札したかのようにブログに書き込み、サイト運営者側から金銭を受け取っていたことが発覚し、社会的な問題となっている。名前が浮上しているのは、タレントのほしのあきさんや、お笑いコンビ「ピース」の綾部祐二さん、モデルの小森純さんらだ。

ペニーオークションとは、入札するたびに手数料がかかる形式のインターネットオークションのことで、運営企業側が中古品ではなく新品を用意することが多く、うまくいけば対象商品を市場価格よりも安く落札できるとされている。しかし、入札して落札できなかった場合でも、費やした入札手数料は返還されないシステムになっているため、実際には高額取引となるケースもある。

今回の運営者が逮捕された事件では、最終的に「ボット」と呼ばれる自動更新プログラムに落札させることで、ユーザーは入札してもほとんど落札することができず、入札手数料が詐取される仕組みになっていた。

実際には落札していないにも関わらず、商品を落札したと芸能人が虚偽の内容をブログに書き込む行為は、消費者(ブログ閲覧者)に誤解を与える可能性が大いにあり、ブログの内容を信じてペニーオークションを利用した人がいるかもしれない。

それでは、これらの芸能人の書き込み内容を信じて不正な仕組みになっているペニーオークションを利用した人は、当該芸能人らに補償を求めることはできるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。

●その芸能人に故意又は過失があったかどうか

「今回、虚偽の書き込みを行った芸能人のブログに影響されて不正なペニーオークションを利用した人は、その芸能人に対して、運営者の詐欺行為に加担した(詐欺行為を容易にするための手助けをした)として、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。」

「芸能人の不法行為責任が認められるためには、(1)芸能人の故意又は過失、(2)権利侵害又は法律上保護される利益の侵害、(3)損害の発生、(4)(1)と(3)の間の相当因果関係の存在が必要となります。このうち本件で主に問題となるのは、(1)の『故意又は過失』の要件でしょう。」

●過去には芸能人の損害賠償責任が認められた事例がある

「過去の先例には、価値のない土地を騙して高値で売りつける『原野商法』という詐欺行為をした会社のパンフレットに、自己のメッセージとして当該会社とその取り扱う商品を紹介・推薦をした芸能人に対する不法行為責任が認められたものがあります(大阪地裁昭和62年3月30日判決)。」

「この事例では、芸能人が商品を推薦することの影響力の大きさや、販売価格が少額でなかったこと、芸能人が販売価格を知っていたことなどの事情が考慮され、芸能人は、広告主の事業に不正があった場合に生じる損害が多額に上る可能性を認識し、必要な調査を尽すべき注意義務があるのにこれを怠った(広告主の事業内容を全く調査しなかった)過失があるとして、芸能人の損害賠償責任が認められました。」

●芸能人に虚偽の宣伝行為に関与している認識があったとすれば、共犯に問われる可能性も

「今回のペニーオークションの例では、報道を見る限り、知人に頼まれてブログへの虚偽の書き込みを行った時点では、芸能人がオークション運営者の詐欺行為を認識し、あるいは認識しえる状況にあったようには見受けられませんので、その意味で芸能人と運営者との関係は非常に間接的で、芸能人が運営者の事業内容を調査しなかったとしても、利用者に対して賠償義務責任を負う可能性は低いと思われます。」

「しかし、芸能人がブログに虚偽の書き込みをするにあたり、何らかの詐欺に関わる可能性があるという認識をもっていたとすれば、運営者の詐欺行為に加担した、あるいは書き込み前に十分な調査をすべき注意義務を怠ったとして、芸能人の利用者に対する損害賠償責任が認められる可能性が出てくるでしょう。また、芸能人に運営者による虚偽の宣伝行為に関与している認識があったとすれば、『人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした』として、軽犯罪法違反の共犯(同法1条34号、3条)に問われる可能性はあります。」

この問題が発覚して以後、関わったとされる芸能人について日に日に新たな名前が報道されるなど、世間の関心は依然として高い。

各芸能人に運営者の詐欺行為に加担する意図が全くなかったとしても、結果的にファンを巻き込んでしまうようなことにならないよう、芸能人にはブログに書き込む内容にも充分注意していただきたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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