10379.jpg
シャープ経営危機、単体では「債務超過」ーー解消するためのポイントは?
2015年05月31日 10時20分

シャープの経営危機が深刻だ。5月14日に発表された2015年3月期連結決算では、最終損益が2223億円の赤字に転落した(前期は115億円の黒字)。単独ベースでは、資産を全部売っても借金を返せない「債務超過」の状態になっている。

報道によると、シャープの自己資本比率は3月末で1.5%(前期は8.9%)に落ち込み、決算短信にも「継続企業の前提に関する重要な疑義」があると記載された。再建策として、国内従業員3500人の削減や大阪本社の売却案を発表するなど、まさに瀬戸際だ。

今後、再建策がうまくいかない場合には、連結ベースでも債務超過になる可能性が指摘されている。この「債務超過」という言葉は、経済ニュースでときどき耳にするが、一般的に、どのような状態をさすのだろうか。債務超過が続くと、どんな悪影響があるのか。山本邦人税理士に聞いた。

シャープの経営危機が深刻だ。5月14日に発表された2015年3月期連結決算では、最終損益が2223億円の赤字に転落した(前期は115億円の黒字)。単独ベースでは、資産を全部売っても借金を返せない「債務超過」の状態になっている。

報道によると、シャープの自己資本比率は3月末で1.5%(前期は8.9%)に落ち込み、決算短信にも「継続企業の前提に関する重要な疑義」があると記載された。再建策として、国内従業員3500人の削減や大阪本社の売却案を発表するなど、まさに瀬戸際だ。

今後、再建策がうまくいかない場合には、連結ベースでも債務超過になる可能性が指摘されている。この「債務超過」という言葉は、経済ニュースでときどき耳にするが、一般的に、どのような状態をさすのだろうか。債務超過が続くと、どんな悪影響があるのか。山本邦人税理士に聞いた。

●蓄えを使い切り、借金だけの状態

「債務超過とは、貸借対照表において、『負債』が『資産』を上回っている状態をいいます。貸借対照表では、資産=負債+純資産です。つまり、資産から負債を差し引いたものを純資産といいますが、債務超過はこの純資産がマイナスの状態であると表現することもできます。

純資産は、設立・増資の際に受け入れる資本金や、過去に稼いだ利益の累積などから構成される、いわば会社の『蓄え』です。その蓄えを赤字によって全て使い切り、さらにマイナスとなった状態が債務超過です」

では、債務超過が続いた場合、どのような悪影響が出るのだろう。

「資産よりも負債が多いということは、一般的に資金繰りが悪化する可能性があります。そのうえ、金融機関からの格付けも下がりますので、新規の借入が困難になることもありますね。

現時点で、資産よりも負債が多いわけです。つまり、将来、利益が出る可能性が考えられない場合には、株式の価値がゼロになるとも言えるでしょう。

こうなると、増資による資金調達も難しくなります。上場会社においては、一般的に株価が下がり、連結ベースで1年以内に債務超過の状態を解消できない場合には、上場廃止となる可能性もあります」

●債務超過を解消するには?

債務超過を解消するには、どうすればいいだろうか。

「まず、純資産を増やす必要があります。

短期的にはこのような方法があります。

(1)含み益のある土地や建物などを売却する

(2)増資をする

(3)債務を免除してもらう

(4)負債を資本に振り替える(デット・エクイティ・スワップ)

(5)不採算の事業を切り分け、採算の取れる事業の資産・負債だけを残す会社分割を行う」

まさに、今、シャープが掲げている再建策と重なる。長期的には、どんな手があるだろう。

「長期的には、利益を積み上げていくことが必要ですね。通常は、利益から法人税等を控除した後の金額が純資産として蓄えられます。しかし、債務超過の会社は、利益が過去の損失と相殺されますから、過去の損失が残っている間は、法人税等を支払う必要がありません。そのため、事業の利益の分だけ、そのまま純資産を増加させることができます。

何にせよ、企業としては、債務超過の状況を少しでも早く、脱却する必要があるでしょう」

山本税理士はこのように話していた。はたしてシャープは持ち直せるのか。今後の行方を注視したい。

【取材協力税理士】

山本 邦人(やまもと・くにと)税理士

監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。現在は中小企業を中心に160件を超えるクライアントの財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。

事務所名:山本公認会計士・税理士事務所

事務所URL:http://accg.jp

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る