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同僚の「セクハラ発言」はやし立てたり、見て見ぬフリ――それだけでも責任問われる?
2016年02月11日 10時08分

JA常陸は、昨年12月の忘年会で女性職員に「セクハラ発言」をしたとして、40代の男性管理職を諭旨解雇の処分にした。一緒になってはやし立てた職員4人や、注意せずに見過ごした別の管理職4人も、降格や降職の処分になった。

報道によると、管理職の男性は職員27人が出席した支店の忘年会で、女性職員に対して、服を脱ぐように求めたり、性的な発言を繰り返したりしたという。

一般論として、自分が直接セクハラ発言をしていなくても、はやし立てて煽ったりすることや、聞いてないフリをしてやり過ごそうとした場合、法的にも責任があるのだろうか。吉成安友弁護士に聞いた。

JA常陸は、昨年12月の忘年会で女性職員に「セクハラ発言」をしたとして、40代の男性管理職を諭旨解雇の処分にした。一緒になってはやし立てた職員4人や、注意せずに見過ごした別の管理職4人も、降格や降職の処分になった。

報道によると、管理職の男性は職員27人が出席した支店の忘年会で、女性職員に対して、服を脱ぐように求めたり、性的な発言を繰り返したりしたという。

一般論として、自分が直接セクハラ発言をしていなくても、はやし立てて煽ったりすることや、聞いてないフリをしてやり過ごそうとした場合、法的にも責任があるのだろうか。吉成安友弁護士に聞いた。

●見ているだけだった人も、賠償責任あり

「はやし立てた者が不法行為責任を負うことはもちろんですが、やり過ごした者も不法行為責任を負う場合があります。

はやし立てて煽ったりすれば、直接行為をする者を助長して、精神的損害の発生に原因を与えているといえます。

見過ごした者についても、その地位や状況等から、制止する義務があったと評価される場合には、制止しなかったことが不法行為に該当します」

たとえば、管理職の場合だと、見てみぬふりには責任が生じるということか。

「はい。管理職は、業務命令権を付与される反面、これを適切に行使して、部下に違法行為をさせないようにする監督責任があります。したがって、管理職が、セクハラを制止可能であったのに、制止しなければ、監督責任を果たさず精神的損害の発生に原因を与えたものとして、不法行為に該当します」

勤務時間外での忘年会でもそうなのか。

「勤務時間外の忘年会でも、免れられないでしょう。

ちなみに、会社の使用者責任が問われたケースですが、社員が私的に開催した飲み会での性的嫌がらせについても、会社の責任が肯定された例もあります(大阪地裁平成10年12月21日判決)。

これは、社員間の懇親を図るための会として行われた宴席で、仕事の話を絡めつつ性的嫌がらせが行われた事件でしたが、会社が社員間の私的な飲み会を禁止する通達を出していたにもかかわらず、業務執行性があるとされたのです」

損害賠償についてはどうなるのだろうか。

「懲戒処分については、それぞれの態様や地位等によって違いがあるでしょうが、損害賠償請求については、民法719条1項が『数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う』と規定しています。

被害者との関係では、直接セクハラ行為を行っていない者が、直接行った者よりも責任が軽いということにはなりません。たとえば、被害者の損害額が100万円と認定された場合、それぞれが被害者との関係で100万円全額の賠償責任を負います。

被害者は、全額について支払いを受けるまでは、誰に請求しても構いません。たとえば、直接セクハラを行った人間は資産が乏しく、見過ごした管理職に資産があるような場合だと、判決確定後、全額について、管理職の資産を差し押さえることもできます」

吉成弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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