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「エコキャップ」詐欺?――売却益を「ワクチン代」に寄付しなかったNPOの法的責任
2015年04月13日 17時55分

「世界の子どもたちにワクチンを届けよう」と呼びかけて、ペットボトルのキャップのリサイクルを進めるNPO法人が、2013年9月以降、回収したキャップの売却益をワクチン代として寄付していなかったことが明らかになり、批判の声があがっている。

問題となっているNPO法人「エコキャップ推進協会」(横浜市)は、2007年の設立以降、回収したキャップをリサイクル業者を通じて売却。その利益の一部を東京都の認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを日本委員会」に寄付していた。

ところが報道によると、協会は2013年9月以降、キャップの売却益をワクチン代として寄付していなかった。協会の矢部信司理事長は4月10日、記者会見を開いて、「売却益は障害者自立支援事業にあてた」「説明が不十分だった」と釈明した。

たしかに、協会の活動規則を記載した「定款」には、売却益はワクチン代のほか、障害者支援などにあてるとしている。ただ一方で、「エコキャップ詐欺だ」という批判の声もあがっている。はたして、今回のケースは「詐欺」にあたるのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。

「世界の子どもたちにワクチンを届けよう」と呼びかけて、ペットボトルのキャップのリサイクルを進めるNPO法人が、2013年9月以降、回収したキャップの売却益をワクチン代として寄付していなかったことが明らかになり、批判の声があがっている。

問題となっているNPO法人「エコキャップ推進協会」(横浜市)は、2007年の設立以降、回収したキャップをリサイクル業者を通じて売却。その利益の一部を東京都の認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを日本委員会」に寄付していた。

ところが報道によると、協会は2013年9月以降、キャップの売却益をワクチン代として寄付していなかった。協会の矢部信司理事長は4月10日、記者会見を開いて、「売却益は障害者自立支援事業にあてた」「説明が不十分だった」と釈明した。

たしかに、協会の活動規則を記載した「定款」には、売却益はワクチン代のほか、障害者支援などにあてるとしている。ただ一方で、「エコキャップ詐欺だ」という批判の声もあがっている。はたして、今回のケースは「詐欺」にあたるのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。

●刑法上の「詐欺」に問えるのか?

「キャップの売上をワクチン代として寄付していなかったのは、活動の趣旨に賛同してキャップを提供してきた人たちの善意を踏みにじっています。

しかし、今回のケースは、立証という実務上の問題から、刑事責任、民事責任のいずれも追及しにくいものであろうと思われます」

田沢弁護士はこう切り出した。では、「詐欺」にあたらないのだろうか。

「刑法上の詐欺罪は、人を欺く『欺罔(ぎもう)行為』によって、財物をだまし取ることによって成立します(刑法246条1項)。

もう少し詳しく説明すると、

(1)『欺罔行為』により相手方が『錯誤』(勘違い)に陥る

(2)その『錯誤』を原因として、相手が『財産上の処分行為』を行う

(3)その結果、『財物の交付』がなされる

という流れが必要になります。さらに、(1)の前提として(4)相手をだまして、財物の交付を受けようという『故意』も必要です。

今回のケースで、『詐欺である』というためには、キャップが提供される前の段階で、(4)の『故意』およびこれに基づく(1)の欺罔行為が存在しなければなりません」

●「詐欺」にあたる場合でも刑事責任の追及は難しい

では、「詐欺」にあたるケースはあるのだろうか。

「もともとワクチン代として寄付する意思でキャップの提供を募っていたけども、実際にキャップが提供された後に、ワクチン代として寄付しないことに決めたという事情であれば、『欺罔行為』が存在しないことになり、詐欺にはなりません。

したがって、詐欺にあたるか否かは、ワクチン代として寄付しない意思があるにもかかわらず、寄付するように装ってキャップの提供を募り、ワクチン代として寄付されるものと信じた人たちが、実際にキャップを提供したという事実関係があるか否かにかかっているということになります。

こうした事実関係があれは、詐欺にあたるケースもあるでしょう」

しかし、田沢弁護士は、詐欺にあたる場合でも刑事責任の追及は難しいと説明する。

「捜査当局としては、だまされてキャップを提供した被害者が特定されない限り、捜査のしようがありません。

そもそも、『どのキャップが誰のものか』を特定することは困難を極めますので、善意を踏みにじられた人たちがどのようにして被害届を提出するのかという問題が立ちはだかります。

また、キャップそのものの価値が僅少で、もともと捨てるつもりでいた人であれば、わざわざ被害届を提出することもないと思われます」

●民事上の責任は問えるのか?

一方で、キャップを提供した人が「売上をワクチン代に使え」「キャップを返せ」と求めることはできないのだろうか。

「キャップの提供とその承諾・受領は、『贈与契約』ですので、民法のルールに従うことになります。

贈与契約が、売却益をワクチン代として寄付するという受贈者(協会)側の義務を課した贈与であると考えれば、贈与者(キャップ提供者)側は、受贈者に対しその義務の履行を請求できます。

あるいは、贈与契約を解除して、提供したキャップの返還を請求できることになります。

しかし、そうはいっても、自分が特定のキャップを提供したこと、そのキャップの売却益がワクチン代として寄付されていないことの証明は困難でしょうから、事実上、そのような請求は断念せざるを得ないとはいえます」

このように民事上の責任の追及も難しいということだ。キャップを提供した人は、泣き寝入りということなのだろうか。

「人の善意を踏みにじる行為に対する道義上の責任まで、うやむやにしてしまうことはありません。改善に向けてしっかりと対応していただくように、世間が監視していく必要があるといえるでしょう」

田沢弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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