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過労死ラインを超える「固定残業代」、契約したからって有効と言えるの?
2019年09月14日 09時24分

「月30時間5万円」など、あらかじめ一定の残業時間を見込む「固定残業代」。設定時間を超えれば、別途残業代がつくはずだが、お金は固定のまま、残業ばかりが増えるというケースが未だになくならない。

今年7月26日には、飲み物の補充などを担当する自販機ベンダーの社員が固定残業代の無効を主張して、会社を訴えている。

この会社では月90時間超の残業が設定されていたが、実際には200時間を超えることもあったという。一方、残業代は定額で、労働基準監督署から是正勧告も受けている。

裁判で労働者側は「過労死ラインを超える月90時間超の固定残業は公序良俗に反して無効」だとも主張している。

一般に裁判では、固定残業代の有効性はどのように判断されるのだろうか。竹之内洋人弁護士に聞いた。

「月30時間5万円」など、あらかじめ一定の残業時間を見込む「固定残業代」。設定時間を超えれば、別途残業代がつくはずだが、お金は固定のまま、残業ばかりが増えるというケースが未だになくならない。

今年7月26日には、飲み物の補充などを担当する自販機ベンダーの社員が固定残業代の無効を主張して、会社を訴えている。

この会社では月90時間超の残業が設定されていたが、実際には200時間を超えることもあったという。一方、残業代は定額で、労働基準監督署から是正勧告も受けている。

裁判で労働者側は「過労死ラインを超える月90時間超の固定残業は公序良俗に反して無効」だとも主張している。

一般に裁判では、固定残業代の有効性はどのように判断されるのだろうか。竹之内洋人弁護士に聞いた。

●名目と実態がかけ離れていないか?

ーー裁判では、固定残業代の有効性をどのように判断するのでしょうか?

「最高裁判例上は、残業代の計算方法は労働基準法37条の定め(割増率25%など)のとおりでなくともよく、同条の計算方法によった場合を下回らなければその他の支給方法も有効としています。

そして、固定残業代方式が有効となる要件としては、少なくとも通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外等割増賃金に当たる部分が判別できることを要求しています。この判別ができないと、割増賃金の額が労基法の定めを下回っていないかの検証ができないからです。

もっとも、それは、単に給料のうち〇円は残業代と明記してあればよいというものではなく、当該『残業代』が時間外労働に対する対価と評価しうるものであるかどうかも問題とされます」

ーー具体的にはどんな要素をみるのでしょうか?

「名目と実態が乖離していないかも判断要素となっています。

ある事案では、固定残業代が月28時間分に相当するところ、実際に月ごとの残業時間をみてみると20時間台が67%、30時間以上が20%、20時間未満が13%であり、固定残業代と大きく乖離するものではないので対価性を有すると判断されています」

●実態に合っていても、設定時間は自由ではない

ーー設定時間は何時間でも良いのでしょうか?

「いくら実態と合致しており対価性は認められるとしても、たとえば、恒常的に過労死ラインとされる月80時間前後の残業がある実態で、月80時間分の固定残業代を支給するという労働契約を有効なものと認めてよいのかどうかは別の問題です。

このような固定残業代の定めは、恒常的長時間労働により労働者の健康を損なう危険があり、公序良俗違反で無効として、残業代部分も通常の労働時間の賃金とみなして別途残業代の支払いを命じた東京高裁等の裁判例があります。

しかも、今春の改正労基法施行により、時間外労働は原則年360時間以下(上限720時間はあくまで臨時的な特別の事情がある場合)と規制されましたので、一層公序良俗違反性は高まったといえます」

●固定残業代、適切運用なら企業のメリットは低い

ーー固定残業代をめぐるトラブルが後を絶ちません

「本来は、固定残業代でもカバーする時間を上回ればその分の残業代を払わなければならないため、労働時間の管理自体は必要です。

他方で当該時間に達しなければ、法律の義務以上の支払いをすることになります。したがって、事務負担の軽減は限定的で過払いコストと釣り合わないのではと思います。

となると、結局のところ、時間管理をせず、カバー時間を超えても知らん顔という違法な形で用いることを前提とした制度としか思えませんので、規制すべきと思います」

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