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「会社は学校じゃない」試用期間中に厳しい評価→「契約社員なら採用」と通告 そんなのアリ?
2024年04月06日 09時35分

正社員枠で採用されたのに、「試用期間後も働くなら契約社員になってもらう」と言われた──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

最初に配属となった部署では適性がないとされ、入社2カ月後に別部署へ異動。業務時間外でも業務関連の課題をこなすなど精力的に働いていた相談者ですが、「能力が足りてない」「会社は学校じゃない」と言われ、「契約社員としてなら一緒に働ける」と通告されたようです。

無遅刻無欠勤で勤務態度には問題なかったという相談者としては、能力不足の自覚はあるものの、「正社員として採用されたのだから、契約社員として働くつもりもこのまま引き下がって辞めるつもりもない」と憤りを隠しません。

試用期間中なら会社側が一方的に「正社員→契約社員」へ雇用形態を変更することも可能なのでしょうか。山本幸司弁護士に聞きました。

正社員枠で採用されたのに、「試用期間後も働くなら契約社員になってもらう」と言われた──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

最初に配属となった部署では適性がないとされ、入社2カ月後に別部署へ異動。業務時間外でも業務関連の課題をこなすなど精力的に働いていた相談者ですが、「能力が足りてない」「会社は学校じゃない」と言われ、「契約社員としてなら一緒に働ける」と通告されたようです。

無遅刻無欠勤で勤務態度には問題なかったという相談者としては、能力不足の自覚はあるものの、「正社員として採用されたのだから、契約社員として働くつもりもこのまま引き下がって辞めるつもりもない」と憤りを隠しません。

試用期間中なら会社側が一方的に「正社員→契約社員」へ雇用形態を変更することも可能なのでしょうか。山本幸司弁護士に聞きました。

●試用期間中でも自由に本採用を拒否できない

試用期間は、実際に働いてもらって、社員としての適格性を判断するための期間です。試用期間であっても、正社員としての労働契約は成立しています。

もっとも、会社には試用期間中に社員が適格性を欠くと判明したときは本採用を拒否できる(労働契約を解約できる)という解約権が残されています。このような試用期間を法的に表現すると、やや難しい言葉となりますが、「解約権留保付労働契約」というものになります。

しかし会社は、試用期間中であるからといって、自由に本採用を拒否できるわけではありません。判例では、本採用拒否について、解約権留保の趣旨・目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合にのみ認められるとされています(最大判昭和48年12月12日・民集27巻11号1536頁。三菱樹脂事件)。

実務上、この本採用拒否が認められるハードルは高く、本採用後の解雇に似た運用がなされていると指摘する専門家もおられます。

●会社が提案してきた理由を確認する必要あり

ご相談のケースでは、会社が試用期間中の社員に対して契約社員への雇用形態変更を提案したとのことですが、この提案が会社の希望を表明したにすぎないものなのか、それとも正社員採用を拒絶する趣旨なのかを確認する必要があるでしょう。

社員が希望しても正社員採用されないのであれば、この会社の提案は、本採用の拒否(解雇)と、契約社員として新たに採用するとの申し入れであると解釈できるでしょう。

その場合、社員が雇用形態の変更に同意しなければ、前述のとおり本採用の拒否は法的に制限されていますから、会社は社員を正社員として雇用し続ける義務を負うこともあるでしょう。

なお、仮に本採用拒否が法的に認められるケースであっても、契約社員として雇用するには社員の承諾が必要ですので、社員に契約社員を強制することはできません。

●会社側は事前に教育や注意をしておくことが重要

ご相談のケースにおける会社の対応ですが、社員の能力不足を感じているのであれば、職務遂行上どういったことを社員に期待しているのかを明確にして、社員と共有することが大切です。

そして、社員の能力不足を定期的にチェックして、その結果を社員と共有し、指導教育を行ったり、注意・警告をしたりすることが重要となります。事前に指導教育や注意警告をしていなければ、能力不足を理由とする本採用拒否(解雇)は正当化され難くなります。

また、仮に社員の能力が期待する水準に達していないとしても、「会社は学校じゃない」といった類の発言はハラスメントに当たる可能性がありますので、注意が必要です。

社員に対して本採用拒否の理由を丁寧に説明し、理解を得られるように努めることが必要でしょう。

●正社員として働き続けたい意思を明確に伝える

ご相談者の方が正社員として働き続けたいということであれば、会社に対してその意思をはっきりと伝える必要があるでしょう。

そして、本採用拒否が認められるべきではない理由として、自分の適格性に問題はない、誠実に職務を遂行している、指導教育が十分に行われていない、といった主張をすることが考えられます。

それでも会社が本採用を拒否した場合には、試用期間の経過により本採用されたものとして、正社員の地位にあることの確認や賃金の支払いを求めて訴訟提起等の法的手段をとる方法が考えられます。

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