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万博の「土下座」が物議、「捨てとけ貧乏人」暴言暴力にさらされる警備員たち 業界が対策へ
2025年05月02日 13時06分
#カスハラ #土下座 #大阪・関西万博 #警備員

大阪・関西万博の警備員が「土下座」する様子が広がり、カスタマーハラスメントとの指摘が相次いだ。

「全国警備業協会」(東京都新宿区)のアンケートでは、警備員数1000人超の企業の7割が「カスハラを受けたことがある」と回答。土下座の要求や暴言などの被害が報告された。

人材確保が困難な中で、採用難や離職の原因となることもあり、業界はカスハラを大きく問題視している。

カスハラ対策指針を策定した全警協は5月2日、加盟会員にカスハラの具体例をイラスト付きで知らせた。警備員は自らが攻撃されても、客の安全を第一とするサービスだけに、相手に厳しく対応してよいのか迷う場面があるという。警備員をめぐるカスハラの実態について取材した。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

大阪・関西万博の警備員が「土下座」する様子が広がり、カスタマーハラスメントとの指摘が相次いだ。

「全国警備業協会」(東京都新宿区)のアンケートでは、警備員数1000人超の企業の7割が「カスハラを受けたことがある」と回答。土下座の要求や暴言などの被害が報告された。

人材確保が困難な中で、採用難や離職の原因となることもあり、業界はカスハラを大きく問題視している。

カスハラ対策指針を策定した全警協は5月2日、加盟会員にカスハラの具体例をイラスト付きで知らせた。警備員は自らが攻撃されても、客の安全を第一とするサービスだけに、相手に厳しく対応してよいのか迷う場面があるという。警備員をめぐるカスハラの実態について取材した。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●万博側の回答「土下座強要されたわけではない」

万博主催の日本国際博覧会協会によれば、警備員が来場者に土下座した出来事は4月17日に起きた。

会場の西ゲートの外で、来場者の男性からバイクの駐輪場の場所を尋ねられたことをめぐり、身の危険を感じて土下座をしたという。

万博協会の広報は、土下座を強要されたわけではないとしながらも「同じようなことが起きないようにしたい」と説明。被害届を出す考えはないとしている。

警察庁の統計によれば、警備員の数は、全国で58万4868人(2023年12月末現在)。そのうち女性は全体の7.0%にあたる4万975人を占める。

50代以上が全体の7割近くを占め、もっとも多い層が70歳以上だ。

●駐車場で怒鳴り散らす運転手たち

神奈川県内の駐車場で誘導などを担当する警備員の70代男性は、暴言をよくうけると取材に明かす。

「大きな駐車場だと、駐める場所が見つからずイライラした運転者が、駐車後も『わかりにくいんだよ!』と怒鳴り散らします」

混雑時にストップや後退の指示をだしても停まらない運転者も多いそうで、ストップの声を聞かないまま、縁石にボディーをこすったところ「訴える!」と理不尽なクレームを入れられたこともあったそうだ。

「怒鳴り散らす人は高齢者が圧倒的に多いです」

警備員のカスハラをめぐって、「全国警備業協会」は第三者や顧客からのカスハラ被害状況を調べるため、会員各社にアンケート(2024年10月・回答社1088社)を実施した。

カスハラ被害を受けたことが「ある」と答えた警備業社は全体の26%(283社)となり、特に1000人超の会社では72.2%(18社)が「ある」と回答した。

すべての業種において「暴言」の被害がもっとも多かった。

業務別では多い順から「空港保安」(37.5%)、「交通誘導」(24.3%)、「雑踏」(18.1%)が続く。

カスハラの影響(複数回答)として、「従業員のメンタル、モチベーション低下」(182社・87.0%) 、「従業員の離職」(63社・30.1%)があると回答している。

●空き缶を投げつけられ、「あんたの写真をSNSにあげる」と因縁

アンケートには実例の回答も記載された。

「警備員の駐車場誘導方法が気に入らず、長時間にわたり説教をし、土下座を要求された」(施設警備業務)

「警備員が自分を犯罪者と疑い監視している等の執拗なクレームを受けた」(保安警備業務)

「バッグ内にライター2本があったため、開披検査(※編注・荷物の中身を確認する検査)をしたところ『入ってねーよ、早くしろよ』『汚ない手でバッグを触られて気分悪い』『いらないから捨てとけ貧乏人』と暴言を吐かれた」(空港保安警備業務)

「片側交互通行時、『いつまで待たせるんだ』と警備員に対して、怒鳴りつけ、発進後、空き缶を投げつけられた」(交通誘導警備業務)

「GW期間中の駐車場において、来場者多数につき混雑し順番待ちが発生している中、ようやく駐車した来場者(若い女)がビール缶片手に『いつまで待たすんだ』『態度が悪い』『あんたの写真をSNSにあげる』などと因縁をつけてきた」(雑踏警備業務)

●客の安全を守る警備員の安全を守るのは警備会社

こうした結果からは、最前線で働く警備員たちが「土下座の要求」のほか、人格を否定するような罵倒の言葉をうけていることがわかる。

この結果を踏まえて、全警協は今年3月、警備業社が従業員をカスハラから守るための基本方針を作った。

そして、5月2日、加盟する全国の警備業協会と加盟社に向けて、カスタマーハラスメントの具体例をイラスト付きで知らせた。

全警協の担当者は取材に目的と狙いを語る。

「警備員がカスハラかどうか悩むような場面もあり、それぞれの現場特有のカスハラについて図解付きの事例集にしました。警備業社も従業員の被害を把握したいので、発注者にも警備員のカスハラについて理解を求め、こうした行為があれば警備業社にも教えてほしいと伝えることもできるようになります。

警備業はお客様の安全を提供するのが一番のサービスです。一般の方に暴言を言われたときに、反発すれば会社に怒られると考える警備員さんもたくさんいると思います。最前線にいる警備員さんを守るのは警備業社と経営幹部の役目です」

そもそも、なぜ警備員はカスハラをうけてしまうのか。

担当者は「感覚的な回答にはなりますが、イライラする場面で矢面に立ち、感情をぶつける相手が警備員しかいないため、何かと暴言などを言われやすい環境にあるのかなと思います」との考えを示す。

●関西万博の土下座「明確にカスハラに近い行為と言えるのでは」

全警協も関西万博の「土下座」映像を把握している。

担当者は「協会として事実調査していませんが、明確にカスハラに近い行為と言えるのではないでしょうか」と指摘する。

警備員の確保が業界の課題だ。カスハラが蔓延すれば、働く人がいなくなりかねない。

「個社ではなかなか対応できません。警備業会全体でカスハラに対応していく必要があります」

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