11181.jpg
車、家電…「自社製品」を買わないと福利厚生でデメリット、そんなのアリ?
2017年05月18日 09時26分

自動車や家電、洋服など、勤務先から自社製品の購入を求められたことはないでしょうか。従業員特典で、安く買えるのであれば、得した気分になれます。しかし、中には購入を強制したり、他社製品の購入に実質的なペナルティーをつけたりする場合もあるようです。

たとえば、ネットの掲示板には、こんな書き込みがありました。投稿者は、自動車会社に勤める男性。自社ではなく、他社の車に乗りたいと上司に尋ねたところ、「通勤手当がなくなっても良いなら」という条件を出されたといいます。

このほか、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、他社の車に乗ると、会社の駐車場(月額900円)の使用許可が下りないといった投稿が寄せられていました。

いずれも購入を強制はしていません。しかし、他社製品を買うことでデメリットが生じています。こうした制度設計は法律的に問題ないのでしょうか。靱純也弁護士に聞きました。

自動車や家電、洋服など、勤務先から自社製品の購入を求められたことはないでしょうか。従業員特典で、安く買えるのであれば、得した気分になれます。しかし、中には購入を強制したり、他社製品の購入に実質的なペナルティーをつけたりする場合もあるようです。

たとえば、ネットの掲示板には、こんな書き込みがありました。投稿者は、自動車会社に勤める男性。自社ではなく、他社の車に乗りたいと上司に尋ねたところ、「通勤手当がなくなっても良いなら」という条件を出されたといいます。

このほか、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、他社の車に乗ると、会社の駐車場(月額900円)の使用許可が下りないといった投稿が寄せられていました。

いずれも購入を強制はしていません。しかし、他社製品を買うことでデメリットが生じています。こうした制度設計は法律的に問題ないのでしょうか。靱純也弁護士に聞きました。

●「自社製品の購入を『薦める』分には構わないが…」

「会社が福利厚生の一環として、自社製品を割引価格で販売し、従業員に自社製品の購入を薦めること自体は問題ありません。

しかし、会社は一般的に、従業員よりも強い立場にあります。会社が立場を利用して、従業員に自社製品などの購入を強制することは問題です。公序良俗に反する商法として、従業員に対する不法行為が成立したり、売買契約自体が無効になる可能性があります」

過去には、こうした問題が、裁判になったこともあるそうですね。

「下級審の裁判例ですが、商品代金全額の損害賠償を認めた例があります。これは、従業員が、10か月間で合計約18万円の自社製品(健康食品)を購入させられたケースでした。この事案で、東京地裁は次のような判断を示して、原告(従業員)の請求を認めました。

『使用者としての立場を利用して、仕事をさせることにからめて従業員に不要な商品を購入させたものであるから、公序良俗に違反する商法であり、不法行為が成立する』(東京地裁H20.11.11)」

●他社製品の購入でデメリットが生じる場合は?

では、通常つくはずの通勤手当がつかなかったり、駐車場が使えなかったりといった、他社製品を買うことでデメリットが生じている場合はどうでしょうか。

「具体的な事情によるので一概には言えません。ただ、支給条件が就業規則等で明確に決められている場合、通勤手当も労働法上の賃金にあたるので、区別を設ける合理性の有無が問題になります。特に、就業規則を変更して、自社製のみ支給とした場合、通勤手当の実費弁償的な性格からみて、合理性を認めることは難しいように思われます。

他方、他社製の車が自社敷地内にズラリと並ぶことは自社製品の信用に影響しかねませんので、駐車場を使用させないことは問題がないとされやすいように思います。ただ、近隣に駐車場を確保することが困難で、ほかに通勤方法がないような場合は、事実上の購入強制として不法行為が成立することが考えられます」

靱弁護士はこのように指摘していました。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る