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「長くできないんですか」被告人が検事の求刑に異例の提案、叶えることはできる?
2016年03月24日 11時22分

「長くできないんですか」。住居侵入や強姦致傷の罪などに問われている男性の裁判員裁判で、被告人の側から、検察官の求刑よりも長い刑期を望む異例の求めがあったことが話題となった。

男性は、アパートの部屋に侵入し、女性に乱暴を働き、けがを負わせたとして、住居侵入や強姦致傷の罪に問われていた。裁判は3月9日に結審した。報道によると、閉廷前、懲役12年を求刑した検察側に対し、男性は「ひどい思いをさせたので、12年では短い。求刑はもう少し長くできないんですか」と尋ねたという。

こうしたケースで、裁判所は、検察官の求刑よりも重い判決を言い渡すことができるのか。刑期が「短い」と不服に考えた被告人は、刑期を長くするよう裁判所に求めることができるのか。荒木樹弁護士に聞いた。

「長くできないんですか」。住居侵入や強姦致傷の罪などに問われている男性の裁判員裁判で、被告人の側から、検察官の求刑よりも長い刑期を望む異例の求めがあったことが話題となった。

男性は、アパートの部屋に侵入し、女性に乱暴を働き、けがを負わせたとして、住居侵入や強姦致傷の罪に問われていた。裁判は3月9日に結審した。報道によると、閉廷前、懲役12年を求刑した検察側に対し、男性は「ひどい思いをさせたので、12年では短い。求刑はもう少し長くできないんですか」と尋ねたという。

こうしたケースで、裁判所は、検察官の求刑よりも重い判決を言い渡すことができるのか。刑期が「短い」と不服に考えた被告人は、刑期を長くするよう裁判所に求めることができるのか。荒木樹弁護士に聞いた。

●裁判所は「検察官の求刑」に拘束されない

「この問題を考える上で、まず、検察官の求刑がどんな意味を持つのかを確認しましょう。

刑事訴訟法上では、検察官の『求刑』について明確な規定はありません。ただし、証拠調べの終了後、検察官は『事実及び法律の適用』について意見を述べる義務があります(刑事訴訟法293条1項)。

この『法律の適用の意見』には、科刑の種類とその内容・刑期についての意見も含まれ、これを一般に『求刑』と呼んでいます。ちなみに、弁護人の弁論は、権利でありますが、義務ではありません(刑訴法293条2項)。

この『法律の適用の意見』は、検察官の権限の一つである『裁判所に法の正当な適用を請求する』権限(検察庁法4条)に基づくと考えられています」

裁判所は、検察官の求刑を超える判決を下すことができるのか。

「裁判所の判決は、検察官の求刑に拘束されません。ですから、求刑を超える判決を言い渡すことも、法律上は全く問題ありません。

もっとも、仮に、検察官の求刑を超える判決があった場合には、検察官としては、量刑不当を理由に控訴をすることができます。

検察官としては、適正な量刑として求刑を意見している以上、それを超える判決は、適正な量刑でない可能性があるからです」

●被告人のみが控訴しても重くならない

今回のケースのように、被告人が「自分の罪を重くしてほしい」と考えているような場合、どう考えればいいのか。

「被告人は、判決の『刑が軽すぎる』と考えて、控訴をしたとしても、被告人のみが控訴している場合、控訴審では、一審判決より重い判決を言い渡すことはできません(刑事訴訟法402条)。

この規定は、被告人の控訴の権利を保障するための規定です。通常、被告人が控訴する動機は、『刑を軽くしてほしい』『無実だから争いたい』といったことが多いでしょう。

それなのに、控訴した結果、量刑が重くなる可能性があるのでは、被告人としては控訴をためらうことになってしまいます。そのため、こうした規定が定められています。

本件では、検察官の求刑が告げられ、結審する直前に、被告人が重い刑罰を希望する旨の発言があったとのことです。

裁判所が、求刑より重い判決を言い渡す可能性はあります。しかし、判決言い渡し後、被告人が『刑が軽い』として不服に感じたとしても、どうしようもないということになります」

荒木弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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