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地方の「渉外弁護士」の仕事が減る? 「外国法弁護士」に関する新制度導入へ
2014年03月09日 14時08分

外国の弁護士資格を持ち、その外国の法律に関わる業務を日本で行う「外国法事務弁護士」(外弁)。彼らに法人格の取得を認め、複数の事務所展開を可能にする「外国弁護士特別措置法改正案」がこのほど国会へ提出された。今国会での成立が見込まれている。

改正の背景には、法律事務の国際化や多様化があるようだが、この制度改正は具体的にはどんな内容で、弁護士業界にはどのような影響があるのだろうか。渉外法務を専門とする藤本一郎弁護士に聞いた。

外国の弁護士資格を持ち、その外国の法律に関わる業務を日本で行う「外国法事務弁護士」(外弁)。彼らに法人格の取得を認め、複数の事務所展開を可能にする「外国弁護士特別措置法改正案」がこのほど国会へ提出された。今国会での成立が見込まれている。

改正の背景には、法律事務の国際化や多様化があるようだが、この制度改正は具体的にはどんな内容で、弁護士業界にはどのような影響があるのだろうか。渉外法務を専門とする藤本一郎弁護士に聞いた。

●「外弁」だけの法人にどれだけ需要があるのか?

「結論として、弁護士業界に大きな影響はないと考えていますが、危機感は持ちたいものです」

藤本弁護士は、このように述べる。そもそも、今回の法改正では、何ができるようになるのだろうか?

「今回の外弁法改正案では、外国法事務弁護士(外弁)のみが社員(出資者兼経営者)となる法人(以下、外弁法人)が設立できるようになりました。

一方で、外弁と日本弁護士とが共同事業として1つの法人を設立する『混合法人』については、議論には上りましたが、法案には盛り込まれませんでした。

わが国において、外資系法律事務所は、外弁と日本弁護士が共同出資する『外国法共同事業』として、組合形式で形成されることが多いのが現状です。日本弁護士が社員になれない外弁法人に、日本国内でどれだけ需要があるかは疑問です」

なお、藤本弁護士によれば、「外弁法人と日本弁護士とが、別々の組織を維持しながら『外国法共同事業』を行うことは可能です」ということだ。

たしかに、日本法の法律事務が行えない外弁のみの法人では、利用者側の使い勝手は、そこまでよくなさそうだ。そうなると、今回、外弁法人を認めることの意義はどこにあるのだろうか?

●渉外法務を担う日本弁護士の育成は十分ではない

「株式会社などの場合は『法人』になることによって、有限責任になるというメリットがあります。しかし、わが国の弁護士法人や外弁法人は、たとえ法人になっても、有限責任は認められていません。

そこで、積極的に外弁法人設立の意義を見い出すとすれば、わが国の組合形式の法律事務所では認められていない『支店を設けること』くらいではないかと思います」

その「支店」は、業界にどれぐらいのインパクトを与える内容なのだろうか?

「従来であれば進出が難しかった大阪や名古屋といった地方主要都市に、外弁法人の支店ができる可能性があります。それにより、地方の渉外業務を扱う弁護士は、一定の影響を受ける可能性があります。

特に、コストの安いアジアの法律事務所が進出すれば、海外進出業務や外国の知的財産権の出願、管理業務を受任してきた地方の弁護士は影響を受ける可能性があるでしょう」

冒頭に紹介した発言のなかで、藤本弁護士は「危機感を持ちたい」と語っている。これは、どういう意味だろうか。

「渉外法務を担う弁護士が、日本では十分育っていないことですね。

わが国の弁護士の人数は、他国と比べて相対的に少ないです。司法試験合格者数が増えたと議論されていますが、2013年の合格者は2049人。一方、中華人民共和国は多い年では8万人、米国は年5万人程度が合格します。中国の渉外事務所は、いまや律師(弁護士に相当)3000名規模がゴロゴロしていますが、わが国では最大でも弁護士500名規模です。

今回の改正をきっかけに、わが国の弁護士も危機感を持ち、よりグローバルな視点で渉外法務を担えると、わが国全体の社会正義に資することができるのではないかと思います」

国際ビジネスで活躍する渉外弁護士が、日本ではまだまだ不足しているようだ。藤本弁護士は「私自身も一層の努力をしていきたいです」と抱負を述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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