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過労自殺した下請け男性、工期遅れでゼネコンから「催促」…パワハラになる?
2019年05月27日 09時55分

2016年5月に自殺した都内の男性(当時52)について、遺族代理人が4月18日に記者会見を開き、渋谷労働基準監督署から労災認定(3月25日付)されたことを明かした。

男性は、厨房設備の会社に勤務し、ホテルの厨房工事の現場責任者を務めていた。このホテル工事では、大手ゼネコンが元請けとなり、男性の会社は一次下請けという位置付けだった。

工期遅れから、男性は勤務先に応援を要請したが、具体的なサポートはなし。一方、元請けのゼネコンからは厳しいプレッシャーもあったようで、男性のLINEアカウントにはゼネコン側からの「何回もかけてんだから折り返せよ」というメッセージも残っている。

遺族側は会見で、勤務先だけでなく、ゼネコンの担当者の対応に問題がなかったかについても話し合っていきたいと述べた。

一般論として、工期や予算がある以上、上流企業や依頼主から厳しい要求が突きつけられることは珍しくない。ある程度のプレッシャーは仕方がない部分もあるはずだ。

企業を超えた叱責やプレッシャーはどこからがパワハラに該当するのだろうか。こうした行為について、法律は十分サポートできているのだろうか。島田度弁護士に聞いた。

2016年5月に自殺した都内の男性(当時52)について、遺族代理人が4月18日に記者会見を開き、渋谷労働基準監督署から労災認定(3月25日付)されたことを明かした。

男性は、厨房設備の会社に勤務し、ホテルの厨房工事の現場責任者を務めていた。このホテル工事では、大手ゼネコンが元請けとなり、男性の会社は一次下請けという位置付けだった。

工期遅れから、男性は勤務先に応援を要請したが、具体的なサポートはなし。一方、元請けのゼネコンからは厳しいプレッシャーもあったようで、男性のLINEアカウントにはゼネコン側からの「何回もかけてんだから折り返せよ」というメッセージも残っている。

遺族側は会見で、勤務先だけでなく、ゼネコンの担当者の対応に問題がなかったかについても話し合っていきたいと述べた。

一般論として、工期や予算がある以上、上流企業や依頼主から厳しい要求が突きつけられることは珍しくない。ある程度のプレッシャーは仕方がない部分もあるはずだ。

企業を超えた叱責やプレッシャーはどこからがパワハラに該当するのだろうか。こうした行為について、法律は十分サポートできているのだろうか。島田度弁護士に聞いた。

●元請けの責任は原則追及が難しい

まずは前提として、パワハラの定義を確認しておこう。

「パワハラの定義はいろいろありますが、厚労省によると、『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』とされています。

パワハラの程度が強いときは、会社に対して安全配慮義務違反の責任を問える場合があります。

パワハラがさらにひどく悪質な場合は、パワハラをしている当該従業員個人に対して不法行為責任を問える場合もあります(会社に対して使用者責任を追及することも可能)」(島田弁護士)

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元請けと下請けの関係のときも、「同じ職場」と言えるのだろうか?

「元請の従業員と下請けの従業員は、所属する企業が違いますので、元請企業は、下請の従業員に対して、原則として安全配慮義務を負いません。

ということは、パワハラの程度がひどく悪質で、元請従業員に対して不法行為責任を問える ような場合はともかくとして(この場合は元請企業にも使用者責任が発生する)、原則的には元請企業に対して安全配慮義務違反の責任は追及できないことになります」

●実質的な雇用関係にあるときは例外

では、元請けからのプレッシャーについて、責任を追及することはできないのだろうか。

「元請と下請けの関係いかんによっては、例外もありえます」と島田弁護士は言う。

「すなわち、元請企業と下請企業の従業員との間に実質的に雇用関係と同視できるような使用従属の関係が生じている場合には、元請企業は下請け企業従業員に対して、安全配慮義務違反を負うと判断した裁判例があります(静岡地裁平成24年3月23日判決、東京地裁平成 20年2月13日判決など)。

今回の事例では、元請と下請けの使用従属関係の程度は明らかではありませんが、男性のLINEアカウントに、元請けの担当者から『何回もかけてんだから折り返せよ』というメッセージが残っているそうです。

こうした事情をみると、雇用関係と同視できるような使用従属関係が存在したと認定される可能性もあるかと思います」

会見で亡くなった男性側は今後、話し合いで真相を究明したいと話していた。元請け側からのプレッシャーの程度や、労働実態の解明がポイントになってきそうだ。

●工期遅れの下請けにどう対応すれば良い?

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とはいえ、工期が遅れているのなら、元請けとしてせっつくことはあるだろう。下請けへのプレッシャーがパワハラになりうるのなら、どういう対応をすべきなのだろうか。

「約束した工期が遅れているわけですから、ある程度強い言葉で進捗確認をすることは当然だとは思いますが、少なくとも、罵倒など、相手の人間性自体を否定するようなかたちでは、絶対にしてはなりません(これは不法行為になりえます)。

具体的な事情にもよりますが、工期が遅れてしまった具体的な理由を聞き、それが何らかの 方法で解決可能であれば協力して解決を目指すべきです。

仮に解決不可能であったとしても、それは究極的には元請企業と下請け企業間の請負契約の債務不履行(履行遅滞)の問題として、請負代金の減額請求等の法的問題として処理されるべきです。

下請け企業の現場担当者を追い詰めても、何もいいことはありませんし、かえって責任を問 われる可能性があるということに留意すべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

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