11584.jpg
野々村竜太郎氏が初公判「欠席」 被告人不在のまま進めることはできないのか?
2015年11月25日 16時54分

日帰り出張などを装って政務活動費約900万円をだまし取ったとして、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で起訴された元兵庫県議・野々村竜太郎被告人が、11月24日に神戸地裁で予定されていた初公判を欠席した。

報道によると、野々村被告人から「精神的に不安定で出廷できない」と連絡があったと、弁護人が法廷で説明した。午後3時から2時間の公判が予定されていたが、わずか9分間で中止が決まった。裁判所は、改めて公判の期日を指定する。

刑事事件の裁判は、被告人がいなければ公判を進めることができないのだろうか。元裁判官の田沢剛弁護士に聞いた。

日帰り出張などを装って政務活動費約900万円をだまし取ったとして、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で起訴された元兵庫県議・野々村竜太郎被告人が、11月24日に神戸地裁で予定されていた初公判を欠席した。

報道によると、野々村被告人から「精神的に不安定で出廷できない」と連絡があったと、弁護人が法廷で説明した。午後3時から2時間の公判が予定されていたが、わずか9分間で中止が決まった。裁判所は、改めて公判の期日を指定する。

刑事事件の裁判は、被告人がいなければ公判を進めることができないのだろうか。元裁判官の田沢剛弁護士に聞いた。

●被告人の防御権を保障している

「刑事訴訟法286条は『被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することができない』と定め、さらに同法288条1項は『被告人は、裁判長の許可がなければ、退廷することができない』と定めています。

つまり、被告人の出頭(出廷)は、裁判を始めるための要件であるとともに、裁判を継続するための要件とされているわけです」

田沢弁護士はこのように述べる。どうして、そうした仕組みになっているのだろうか。

「被告人が刑事裁判の当事者の一人であり、有罪判決を受けた場合は処罰の対象となることから、その防御権は十分に保障されなければならないからです。

単純に被告人が出頭しないというだけで開廷して手続を進めてしまうと、被告人が十分な防御を尽くせないまま処罰されることになりかねません」

ただ、そうなると「逃げ得」になってしまうのではないか。

「確かに、被告人の不出頭を理由に全く開廷できないとすると、今度は迅速な裁判の進行を阻害することになってしまいますし、国家として刑罰権を行使できなくなります。

そこで、刑事訴訟法では、軽微な事件であるなど、一定の場合には被告人の出頭がなくても開廷できるようにしてバランスをとっています(刑事訴訟法第284条等)。

ただし、今回の事件は詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われているわけですから、出頭が不要な軽微な事件にはあたりません。そうすると、被告人の出頭が免除される例外的な場合に該当しない以上、被告人が出頭しないと開廷できないということになります」

●出廷しないとどうなる?

では、今回のケースで野々村被告人がこれからも出廷しない場合、いつまでも裁判が進まないということだろうか。

「正当な理由がないのに不出頭を繰り返すのであれば、強制的にでもその出頭を確保しなければなりません。そのような場合は、裁判所が勾引状を発付して被告人を強制的に連れて来ることになります。

在宅のまま起訴されたからといって、公判期日への不出頭を繰り返していると、やがては身柄を拘束されることになりかねませんし、裁判所の心証も悪くなってしまうでしょうから、裁判所からの召喚状には、素直に応じるべきでしょう」

田沢弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る