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特許庁「日本企業の商標守る」中国などでの訴訟費用支援、どんな意義があるのか?
2016年03月23日 10時47分

中国で起きた、米アップル社の「iPad」訴訟をはじめ、海外ビジネスでは商標をめぐるトラブルが後を絶たない。すベてが悪質とは限らないが、権利を売りつけることを目的とした悪意ある商標出願も少なくない。

そんな商標トラブルから日本企業を救うため、特許庁が支援を強化する。2016年度から、進出先の国で商標の取り消し訴訟を起こす中小企業に、500万円を上限として弁護士への相談や訴訟の費用などの3分の2を補助する。これまでは訴えられた場合の「守り」に限っていたが、積極的に権利を主張する「攻め」にも手を差し伸べる。

しかし、海外での裁判には多額の費用がかかるという印象がある。上限500万円という金額は、中小企業の訴訟を本当に後押しするのだろうか。中国など外国企業との渉外・知財案件を中心とする企業法務に詳しい遠藤誠弁護士に、特許庁の新制度に対する評価を聞いた。

中国で起きた、米アップル社の「iPad」訴訟をはじめ、海外ビジネスでは商標をめぐるトラブルが後を絶たない。すベてが悪質とは限らないが、権利を売りつけることを目的とした悪意ある商標出願も少なくない。

そんな商標トラブルから日本企業を救うため、特許庁が支援を強化する。2016年度から、進出先の国で商標の取り消し訴訟を起こす中小企業に、500万円を上限として弁護士への相談や訴訟の費用などの3分の2を補助する。これまでは訴えられた場合の「守り」に限っていたが、積極的に権利を主張する「攻め」にも手を差し伸べる。

しかし、海外での裁判には多額の費用がかかるという印象がある。上限500万円という金額は、中小企業の訴訟を本当に後押しするのだろうか。中国など外国企業との渉外・知財案件を中心とする企業法務に詳しい遠藤誠弁護士に、特許庁の新制度に対する評価を聞いた。

●過去には「クレヨンしんちゃん」「福原愛」などの事例も

「確かに、日本企業の商品ブランドが中国などで第三者により先に商標出願・登録されてしまうケースが多発しています。中国の例で言うと、過去には『無印良品』等の商品ブランド、『青森』等の地名、『クレヨンしんちゃん』等のアニメキャラクター、『山口百恵』や『福原愛』等の有名人の氏名などが、第三者により商標出願された事例がありました」

いずれも日本ではよく目にするものばかり。どうしてこのようなことが起きるのだろうか。

「中国など多くの国の商標法では、日本と同様、先に商標出願した者に優先的に商標登録が認められる『先願主義』が採用されています。したがって、海外における悪意ある商標出願を防止するためには、何よりも、日本企業が第三者よりも先に海外での商標出願を行っておくことが重要です。

しかし、海外でビジネスを行う予定がなかったために商標出願が遅れ、第三者による商標出願が先に行われてしまうケースや、日本企業がそのブランドを使用していない商品・サービス分野で第三者が先に商標出願してしまうケースもあります」

●「1件の無効審判や訴訟で数百万円以上かかる」

どんな問題が起きうるのだろうか。

「たとえば、日本企業のブランドを、中国で第三者が先に当該商標を出願・登録してしまった場合を考えてみましょう。この場合、日本企業は、そのブランドを中国で商標登録できなくなってしまいます。

もし、日本企業がそのブランドを中国で使用すると、第三者から商標権侵害を理由に訴えられ、使用差止や損害賠償を請求されたり、登録商標を法外な値段で買い取るよう要求されたりするリスクが発生します」

なんとも理不尽に感じるが、対策はないのだろうか。

「日本企業としては、第三者からの訴訟や要求に対処する必要があるほか、第三者の登録商標の無効審判申立てを行うといった法的対抗措置をとる必要があります。ただし、無効審判や訴訟を遂行するには、中国など現地の弁護士に委任する必要があり、日本の中小企業にとっては、高すぎる費用がネックとなってきました」

「高すぎる」とは一体どのくらいなのか。

「英語や日本語のできる中国の弁護士は、報酬を時間制で請求してくることが多いのです。事実関係の調査や証拠収集の費用も含めて言うと、通常、1件の無効審判や訴訟で数百万円以上かかります。とくに最近の円安や現地の物価高・賃上げなどの要因により、海外の弁護士費用は高額化する傾向にあり、中国の弁護士費用が日本の弁護士費用より高いということは今や珍しくありません」

それでは、今回の特許庁の支援はどう評価できるのだろうか。

「従来、費用が高過ぎることから、多くの中小企業が、海外で無効審判や訴訟などの法的対抗措置をとることをあきらめていましたが、費用の3分の2(上限は500万円)までの補助が受けられることは、中小企業にとって非常に大きな援護射撃になるといえるでしょう。海外での悪意ある商標出願に悩まされている中小企業の方々は、ぜひ、この制度を積極的に活用していただきたいと思います」


遠藤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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