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工業高卒、コンビニバイトから司法試験を上限5回目で合格…ギリギリすぎる弁護士の逆転人生
2024年02月17日 07時38分
#転機のロースクール

少年ジャンプをめくっていたベテランバイトが、ある日突然、参考書を読み始めた。佐々木良次弁護士はコンビニで働いていた24歳のころ、初めて勉強に目覚めたのだという。

地元・愛知県の工業高校を卒業して上京、フリーターとして昼間は派遣作業員、夜はコンビニでバイトする生活だった。

「根無し草でした。なんとなく食えてはいるし、こんなもんかと思っていた」。しかし派遣元が違法とされ業務停止になった。いつも一緒に働いていた同僚と、突如連絡がつかなくなった。

法律の知識があれば、消えてしまった彼らを助けることができたかもしれない。そろそろ不安定な生活に終止符を打とう。「法学部」に照準を定めた。慶應大に通う後輩バイトから受験勉強を教えてもらい、駒澤大学に合格。ロースクールを経て、2020年、35歳で弁護士になった。

少年ジャンプをめくっていたベテランバイトが、ある日突然、参考書を読み始めた。佐々木良次弁護士はコンビニで働いていた24歳のころ、初めて勉強に目覚めたのだという。

地元・愛知県の工業高校を卒業して上京、フリーターとして昼間は派遣作業員、夜はコンビニでバイトする生活だった。

「根無し草でした。なんとなく食えてはいるし、こんなもんかと思っていた」。しかし派遣元が違法とされ業務停止になった。いつも一緒に働いていた同僚と、突如連絡がつかなくなった。

法律の知識があれば、消えてしまった彼らを助けることができたかもしれない。そろそろ不安定な生活に終止符を打とう。「法学部」に照準を定めた。慶應大に通う後輩バイトから受験勉強を教えてもらい、駒澤大学に合格。ロースクールを経て、2020年、35歳で弁護士になった。

●退路を断ったところに来た合格通知

佐々木弁護士は、28歳で地元の愛知学院大ロースクール既修者コースに入学。修了後、最後のチャンスとなる5回目に合格した(新司法試験は受験制限回数が定められている。2015年までは「5年間で3回」で三振ともいわれた。2015年から5回に変更されている)。

合格通知を受け取ったのは、自宅の畑を耕していたときだった。修了後に働いていた法律事務所もやめ、完全に足を洗おうと思っていた。結果をインターネットで見ることもせず、畑にいると、大学から携帯に着信があった。

「受かったんだよ、同級生や教授が集まっているから挨拶に来てほしいとの連絡でした。そこでやっと確認し、本当だと分かりました」

劇的な1日はこれで終わらない。学校にバイクで向かう途中、ハイエースに追突される事故に遭う。バイクはレッカーされたが、幸い体にケガはなく、タクシーで祝賀会へと向かったという。

当時、佐々木弁護士の同期生は「三振」してロースクール2周目という人がほとんどだった。10人ほどが共に切磋琢磨し、勉強した。「足を引っ張り合う試験じゃない。仲間を作ることです。ゼミで自分の能力を比較検討しながら、合格ラインまで持っていけるか」。最終的には7人が合格した。

ロースクール時代から乗り始めたバイクが趣味。自分で整備も行う(2023年、佐々木弁護士提供)

●工業高卒・元派遣社員を強みに

卒業校を問われて「工業高校です」と言うと、100パーセントが驚くという。「あの学校から弁護士になれるんですか」とあからさまに言う人もいる。さらに「派遣やってました」と付け加えれば、さらにびっくりされる。

この「異色の経歴」は、弁護士業にも生きている。愛知県で企業法務を扱う中で、中小の製造業経営者とのやりとりが多かった。工業系の知識があれば、話が早い。また、電気工事士や不動産関係で働いた経験などから、インターネット関連への理解がある上、電気工事施工図といった電気設備の屋内配線工事などに関する資料や図面が読める。依頼者から、今にも破れそうな古い図面をどさっと持ってこられたこともある。

「自分の仕事に誇りを持って、チャレンジ精神もある熱い経営者たちに多く出会いました。『他に負けないもの作っているんだ』と語る人たちと一緒に仕事をして、刺激を受けました」

ロースクールは当初、佐々木弁護士のように多様な背景を持つ人たちの受け皿になることが期待されていた。しかし、近年は社会人経験者を含め、法曹志望者は減少している。佐々木弁護士も、近頃はローを通らない予備試験組や上位ローなど、優等生が合格していく仕組みになっていると指摘する。

「頑張れば誰でも受かる試験だと伝えたい。適切な勉強法で取り組めば、僕のような工業高校卒でも受かることができます。大事なのは、弁護士になってから。困っている人の相談を、法律の力で解決し、手助けできるかが重要なんです。どんなビジョンを持っているか。ルートは自分にあった形を選べばいい」

●生まれ変わったら別の仕事もしたい

最近では、豊川高校野球部のいじめ問題に関わった。日本高野連の引き抜き防止という規定で、男子生徒が転校先で野球部に入れなかったとして損害賠償を求めた。いじめが起きたのが2021年、入部の意向を転入先に伝えていなかった学校側の責任を認めた名古屋地裁判決は2023年9月だった。裁判にかかる時間への疑問がある。

「弁護士が必要となるのは、法律という枠の中に収まらずトラブルになったとき。依頼者の負担を考えると、裁判に至るまでに費用や時間をかけないように『マイナスをどれだけ減らすか』という思考で動きます。むしろ、サービスを提供して、社会をプラスに作り上げていくようなビジネスも面白そうだと思います。生まれ変わったら違うこともやってみたい」

佐々木弁護士は苦節11年で念願の法曹資格を手に入れたとはいえ、そこで満足していない。事務所経営という次なるステージに挑んでいる最中だ。

「さすがに3回失敗した頃に、親父が亡くなったのは今でも悔しいですが、もともと行き当たりばったりで目指した仕事です。法曹が増えて、もし稼げなくても、死ぬわけじゃない。最悪、また派遣やったっていいんだし」

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