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「好きな仕事を奪われたくない」職場セクハラ被害→退職せずに裁判闘った13年 社会福祉法人セクハラ訴訟終結
2025年04月26日 09時14分
#社会福祉法人 #グロー

社会福祉法人「グロー」(滋賀県近江八幡市)の理事長だった北岡賢剛氏から、性暴力やセクハラ、パワハラを長年にわたって受けたとして、元職員ら女性2人が賠償を求めた訴訟で、4月11日に北岡氏が控訴を取り下げた。

北岡氏の性暴力やハラスメントを認めて、220万円の支払いを命じた1審判決が確定した。

被害から判決確定まで約13年。原告の木村倫さん(仮名)は、北岡氏が理事をつとめていた社会福祉法人で今も働き続けている。

「自分の好きな仕事を奪われたくなくて戦ってきた。働きながら裁判を続けることはとてもしんどかった」と振り返り、性被害を受けた側が仕事を辞めざるをえない状況に追い込まれる社会に疑問を投げかけた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

社会福祉法人「グロー」(滋賀県近江八幡市)の理事長だった北岡賢剛氏から、性暴力やセクハラ、パワハラを長年にわたって受けたとして、元職員ら女性2人が賠償を求めた訴訟で、4月11日に北岡氏が控訴を取り下げた。

北岡氏の性暴力やハラスメントを認めて、220万円の支払いを命じた1審判決が確定した。

被害から判決確定まで約13年。原告の木村倫さん(仮名)は、北岡氏が理事をつとめていた社会福祉法人で今も働き続けている。

「自分の好きな仕事を奪われたくなくて戦ってきた。働きながら裁判を続けることはとてもしんどかった」と振り返り、性被害を受けた側が仕事を辞めざるをえない状況に追い込まれる社会に疑問を投げかけた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●性暴力の事実が認定された

グローや関連団体で働いていた原告の2人は、北岡氏から性暴力やセクハラを受けたとして、北岡氏とグローに対して計約5250万円を求めて2020年11月に提訴。

2024年10月24日の東京地裁判決は、性暴力やハラスメントの事実を認めて、北岡氏とグローに対して計660万円の支払いを命じた。

判決は、北岡氏から木村さんへの行為は2012年9月以降、約7年に渡ってほぼ間断なく継続していたものと認めた。

グローは原告側に謝罪し、もう1人の原告である鈴木朝子さん(仮名)に440万円を支払った。北岡氏は不服として控訴していた。東京高裁の控訴審判決は5月28日に予定されていたが、北岡氏は4月11日の和解期日に控訴を取り下げたという。

●「男性中心の組織」フジテレビの問題に通じる性暴力と弁護士指摘

原告代理人の笹本潤弁護士は、「北岡氏は障害者芸術分野の第一人者」だとして、権力の差がある構造のなかで性暴力が起きたと指摘。

「社会福祉法人の従業員はほとんど女性で、経営陣はほとんど男性です。男性中心に物事が決定される組織であり、フジテレビの問題に通じるところがある」と述べる。

木村さんは被害をうけてから現在まで約13年間にわたり、この問題と向き合わざるをえなかった。突如として裁判が終わったことに困惑する。7年間の人権侵害でも賠償が220万円では決して見合うものでもないと考える。

「最後まで北岡氏は謝ることもなかった。誠実に対応してもらえなかった」

木村さんは、北岡氏が理事をつとめていた社会福祉法人「愛成会」で今もはたらき続け、裁判を争った。

●性被害をうけた多くの人が職場を去っている

木村さんは、日本初のセクハラ訴訟で勝訴した角田由紀子弁護士から「知る限り、会社を辞めずに訴訟を起こして、現職で残っているのは2〜3人しか知らない」との話を聞いた。

仕事に関連して性被害やセクハラをうけた被害者の「多くは辞めるか、辞めざるをえない状況に追い込まれます」と木村さんは指摘する。

「訴えるにしても辞めてから。それが今の社会の状態だと思うが、私には違和感があります。辞るべきは加害者のほう」と強調した。

「私は自分の好きな仕事を奪われたくなくて戦ってきました。働きながら裁判するのはしんどかったけど、辞めるべきは私ではないという強い気持ちがありました。職場に残るのは大変で、自分だけの力で残れたわけではありません」

●被害者の木村さんが職場に残ることができたのは

木村さんによれば、提訴した2020年11月の時期と前後して、愛成会の評議委員会は北岡氏(辞任)や北岡氏を支持する役員を「一掃」し、「性暴力裁判を応援する体制ができた」という。

とはいえ、それもやすやすと達成できたことではなかった。

笹本弁護士は「社会福祉法にのっとって解任する動きが出たが、北岡氏側が解任を提言した委員を解任しようとしたり、被害者の木村さんが強制的にやめさせられようとした」と振り返る。

「性暴力、ハラスメントはそこらじゅうにある。改めてこなかった社会、見て見ぬふりした社会、軽視する社会があった。社会の転換期になってほしい」(木村さん)

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