12284.jpg
新路線の名前は「北陸新幹線」か「長野新幹線」か?新幹線の名称はどうやって決まる?
2013年07月15日 11時25分

2015年春に長野から金沢までの開業を予定している「北陸新幹線」の名前をめぐり、長野県と北陸地方の石川・富山両県の間で論争が繰り広げられている。

北陸新幹線は1997年に長野まで先行開業していて、現在は「長野新幹線」という通称で運行している。長野県の阿部守一知事は、2013年2月20日の記者会見で「長野という呼び名は定着している」として、金沢まで開業したあとも「長野」の表記を残すよう要望した。

これに対して、富山県の石井隆一知事は2月19日の記者会見で「法令では『北陸新幹線』と明確に書いており、それが基本だ」と表明。石川県の谷本正憲知事も6月25日、「北陸新幹線という名称を使うのが常識的」と県議会予算委員会で述べた。両県に譲る気配はない。

現在も名前をめぐり、熱いバトルが繰り広げられているようだが、新幹線の名前は法律で決められているのだろうか。鉄道にくわしい前島憲司弁護士に聞いた。

●「北陸新幹線」という路線名は法律で決まっているが「通称・愛称」は自由

「新幹線の呼称については、全国新幹線鉄道整備法4条に基づいて国土交通大臣が決定する『建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画』に規定されています。

北陸新幹線については、昭和47年告示第243条に規定されており、路線名は『北陸新幹線』と定められております」

――では、法律論としては、結論はすでに出ている?

「そうですね。もっとも、正式名称があっても、それとは別に通称、愛称を使うことは禁止されておりません。通称、愛称のつけ方も原則自由です。

そもそも『長野新幹線』自体が通称です。北陸地方に乗り入れていない新幹線を『北陸新幹線』と呼ぶことには違和感があり、誤解も生じることから、これまではそう呼ばれていました。しかし今回の延伸で、北陸地方の金沢駅まで乗り入れることになりますから、名実ともに『北陸新幹線』となります」

――『長野』が残る可能性も、まだある?

「はい。法律的には通称への制限はありませんからね。ただ、利用者としては、定着しない通称・愛称だけは使ってもらいたくありません。

かつて、国鉄からJRに移行した際、『国電』と呼ばれていた通勤電車に『E電』という名称が付けられましたが、自然消滅した経緯があります。『長野』の通称を残すにしても、本当に利用者に浸透するかどうか、よく検証してもらいたいと思います」

今回の論争は、新幹線が通る地域の県知事という「為政者」によるものだ。しかし、前島弁護士が指摘するように、重要なのは、新幹線を利用する乗客にとって、どんな通称がわかりやすいかということだろう。この「名前論争」が、乗客の目線もふまえて行われることをのぞみたい。

(弁護士ドットコムニュース)

2015年春に長野から金沢までの開業を予定している「北陸新幹線」の名前をめぐり、長野県と北陸地方の石川・富山両県の間で論争が繰り広げられている。

北陸新幹線は1997年に長野まで先行開業していて、現在は「長野新幹線」という通称で運行している。長野県の阿部守一知事は、2013年2月20日の記者会見で「長野という呼び名は定着している」として、金沢まで開業したあとも「長野」の表記を残すよう要望した。

これに対して、富山県の石井隆一知事は2月19日の記者会見で「法令では『北陸新幹線』と明確に書いており、それが基本だ」と表明。石川県の谷本正憲知事も6月25日、「北陸新幹線という名称を使うのが常識的」と県議会予算委員会で述べた。両県に譲る気配はない。

現在も名前をめぐり、熱いバトルが繰り広げられているようだが、新幹線の名前は法律で決められているのだろうか。鉄道にくわしい前島憲司弁護士に聞いた。

●「北陸新幹線」という路線名は法律で決まっているが「通称・愛称」は自由

「新幹線の呼称については、全国新幹線鉄道整備法4条に基づいて国土交通大臣が決定する『建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画』に規定されています。

北陸新幹線については、昭和47年告示第243条に規定されており、路線名は『北陸新幹線』と定められております」

――では、法律論としては、結論はすでに出ている?

「そうですね。もっとも、正式名称があっても、それとは別に通称、愛称を使うことは禁止されておりません。通称、愛称のつけ方も原則自由です。

そもそも『長野新幹線』自体が通称です。北陸地方に乗り入れていない新幹線を『北陸新幹線』と呼ぶことには違和感があり、誤解も生じることから、これまではそう呼ばれていました。しかし今回の延伸で、北陸地方の金沢駅まで乗り入れることになりますから、名実ともに『北陸新幹線』となります」

――『長野』が残る可能性も、まだある?

「はい。法律的には通称への制限はありませんからね。ただ、利用者としては、定着しない通称・愛称だけは使ってもらいたくありません。

かつて、国鉄からJRに移行した際、『国電』と呼ばれていた通勤電車に『E電』という名称が付けられましたが、自然消滅した経緯があります。『長野』の通称を残すにしても、本当に利用者に浸透するかどうか、よく検証してもらいたいと思います」

今回の論争は、新幹線が通る地域の県知事という「為政者」によるものだ。しかし、前島弁護士が指摘するように、重要なのは、新幹線を利用する乗客にとって、どんな通称がわかりやすいかということだろう。この「名前論争」が、乗客の目線もふまえて行われることをのぞみたい。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る