12751.jpg
「身分証を貸して」チケット売却先からの依頼に困惑…他人の身分証で入ったら違法?
2016年05月08日 00時00分

コンサートのチケットをネットの仲介サイトで売却する過程で、「身分証を貸してほしい」と頼まれ、困惑している人からの相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。

チケットの売買を約束した時点では、身分証明書の話はありませんでしたが、その後、コンサートの主催者が、入場には身分証明書が必要だとアナウンスしたため、買い手側から身分証明書の貸し出しの要望を受けたそうです。

相談者は「他人の身分証明書で、コンサート会場に入場することは、違法ではないのでしょうか」と心配しています。このような行為に違法性はあるのでしょうか。また、相談者は契約の破棄も検討していますが、身分証の件は契約を取り消す理由になるのでしょうか。正木健司弁護士の解説をお届けします。

コンサートのチケットをネットの仲介サイトで売却する過程で、「身分証を貸してほしい」と頼まれ、困惑している人からの相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。

チケットの売買を約束した時点では、身分証明書の話はありませんでしたが、その後、コンサートの主催者が、入場には身分証明書が必要だとアナウンスしたため、買い手側から身分証明書の貸し出しの要望を受けたそうです。

相談者は「他人の身分証明書で、コンサート会場に入場することは、違法ではないのでしょうか」と心配しています。このような行為に違法性はあるのでしょうか。また、相談者は契約の破棄も検討していますが、身分証の件は契約を取り消す理由になるのでしょうか。正木健司弁護士の解説をお届けします。

● 他人の身分証を使うと犯罪になる可能性も

他人の身分証明書を使ってコンサート会場に入場することは、人を欺いて不法に役務(サービス)の提供を受ける行為として、詐欺利得罪(刑法246条2項)などの刑法上の犯罪に該当する可能性があります。

コンサートチケットの売買自体は違法ではありませんが、身分証明書の貸し出しがなければコンサート会場に入場できないわけですから、不法な条件が付された契約であるといえます。民事上も全体として違法性を帯びます。

つまり、不法な条件が付された契約であり(民法132条)、また、公序良俗に違反する契約として(民法90条)、民法上無効となると考えられます。今回のケースでは、事前に身分証明書が必要だと知らなかったことから、錯誤による無効も主張しうるでしょう(民法95条)。

このように、相談者としては、身分証貸し出しが条件になった場合、契約は無効であるとして、これを破棄することができるでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る