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今さら聞けない「タックスヘイブン」のヤバさ 「税金の天国」じゃないよ!
2018年08月30日 15時30分

平成最後の夏休み、海外リゾートで羽を伸ばしてきた人も多いはず。その中で、訪れた国や地域の法人税について考えたことがある人は、いったいどのくらいいるのでしょう。あなたがバケーションを満喫したその場所は、もしかすると「タックスヘイブン」と呼ばれる“脅威”かもしれません。

平成最後の夏休み、海外リゾートで羽を伸ばしてきた人も多いはず。その中で、訪れた国や地域の法人税について考えたことがある人は、いったいどのくらいいるのでしょう。あなたがバケーションを満喫したその場所は、もしかすると「タックスヘイブン」と呼ばれる“脅威”かもしれません。

●タックスヘイブンとは?

「タックスヘイブン(tax haven)」とは「所得税や法人税など、税率が極端に低い国や地域」を指します。ときに誤読されがちなのですが、「heaven(ヘブン)=天国」ではなく「haven(ヘイブン)=避難所」が正しく、日本語では「租税回避地」とも呼ばれています。

実は、このタックスヘイブンにより海外へ流出している税金は、日本円にして約6兆円に上るとも言われています。これは消費税を2%あげた税収と同等とも言われており、この流出を止めることができれば消費税を増税する必要はないのではないか、という声もありました。

このようなタックスヘイブンは世界中に存在します。

たとえば法人税率だけでみると、中東のドバイや、パナマ文書で名が知れ渡ったケイマン諸島においては0%、また、日本と同じアジア圏においても、香港は16.5%、シンガポールでは17%となっています。日本では、普通法人にかかる法人税率が23.2%(住民税、事業税を含めた法定実効税率は29.74%)なので、これらの国や地域がいかに税率が低いかが分かります。

●問題視されている“課税逃れ”

また、タックスヘイブンには以下のような特徴が共通して見られます。

・金融規制がゆるい

・秘匿性が高い

・法人の設立・運営が容易

タックスヘイブンは、法人の設立・運営において実質的な活動を必ずしも要求しません。そこでかねてより、税率が高い国の企業や投資家は事業活動の実態がないペーパーカンパニーをタックスヘイブンに設立し、資金をそこに移して自国での納税を回避してきました。

一見違法のように捉えられるかもしれませんが、脱税などの違法行為には当たるとは言えず、あくまで合法的に税負担を軽減・排除する行為なのです。

ところがタックスヘイブンは秘匿性が高いため、政府などが情報開示を求めても応じず、監視や規制が行き届かないケースが多くありました。そのため、タックスヘイブンによる「課税逃れ」は国の財政問題につながると問題視されてきたのです。

●対策税制

そこで日本では1978年に「外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)」が制定されました。一定の要件を満たす外国法人は日本の国内法人と所得を合算し、日本で課税されるという制度です。2017年には適用範囲の拡大を目的に大幅な改正が行われました。その主なポイントは3つです。

ひとつめは「外国関係会社」の適用要件です。

外国法人のうち、一定の要件を満たす場合は「外国関係会社」と呼ばれ、国内法人と所得を合算して課税が行われます。その判断基準となる「日本居住者及び国内法人が株式などを50%超保有していること」という要件に加え、今回の改正により「国内法人と実質的な支配関係にあること」という要件が新たに追加されました。

また、外国関係会社の租税負担率が20%以上の場合は合算課税の適用外となりましたが、例外として租税負担率が30%未満のとき、「ペーパーカンパニー」など所定の類型に該当する場合は合算課税が適用されることになりました。

ふたつめは「経済活動基準」の適用条件です。

「経済活動基準」とは事業内容、企業実態などの要件をもうけた基準です。外国関係法人の租税負担率が20%未満のとき、その基準をすべてクリアしていれば合算課税の適用外となりますが、一方で基準の要件をひとつでも外れる場合には、原則として合算課税が適用されます。今回の改正では要件の詳細が見直されています。

3つめは「部分合算課税」の適用条件です。

先ほどの「経済活動基準」を全要件を満たしている場合でも、特定の所得に関しては部分的に合算課税が適用されます。今回の改正によりその所得の範囲が見直され、株保有割合の上限が拡大されたり、新たに有価証券の貸付の対価などが加わりました。

これらの改正は2018年4月1日から適用されています。ほかにも法人税率の引き下げなど、今後も「経済の好循環」の実現を目指した政府の税制施策に注目です。

【監修】

福留 聡 (日本·米国ワシントン州)公認会計士、(日本·米国)税理士、行政書士

監査法人で上場企業の監査業務等を経験後,IPO支援、決算支援,IFRS導入支援、日米の法人の税務顧問等を行っている。本、雑誌、DVD等で約50の出版をしており、代表的な著作として『7つのステップでわかる税効果会計実務入門』がある。

事務所名 : 福留聡税理士事務所、福留聡国際会計アドバイザリー株式会社、有限責任開花監査法人

事務所URL:http://www.cpasatoshifukudome.biz/

(弁護士ドットコムニュース)

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