12807.jpg
KADOKAWAとドワンゴが一つになる――株式会社の「経営統合」3つの方法とは?
2014年05月20日 16時44分

出版大手のKADOKAWAと動画配信大手のドワンゴが、10月1日に経営統合すると発表した。持ち株会社「KADOKAWA・DWANGO」を設立し、KADOKAWAとドワンゴがその傘下に入る形だ。

文芸・アニメやゲームなどメディアミックスに強いKADOKAWAの豊富なコンテンツと、ドワンゴが持つ動画配信プラットフォームの「niconico」を融合させることで、「世界に類のないコンテンツプラットフォームの確立」を目指すという。

両社はともに東証一部に上場している株式会社だが、今回の「経営統合」はどんな方法でおこなわれるのだろうか。企業法務にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。

出版大手のKADOKAWAと動画配信大手のドワンゴが、10月1日に経営統合すると発表した。持ち株会社「KADOKAWA・DWANGO」を設立し、KADOKAWAとドワンゴがその傘下に入る形だ。

文芸・アニメやゲームなどメディアミックスに強いKADOKAWAの豊富なコンテンツと、ドワンゴが持つ動画配信プラットフォームの「niconico」を融合させることで、「世界に類のないコンテンツプラットフォームの確立」を目指すという。

両社はともに東証一部に上場している株式会社だが、今回の「経営統合」はどんな方法でおこなわれるのだろうか。企業法務にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。

●経営統合の手法はいくつもある

「株式会社の経営統合をする際には、何らかの形で企業買収(M&A)を行うことになります。M&Aの手法はいくつかありますが、ここでは『合併』と『株式買収』、『株式移転』の3つについて説明しましょう」

このように今井弁護士は切り出した。

「一番シンプルなのは『合併』です。これは、二つの会社が完全一体となり、一つの会社になるものです。統合の究極的スタイルです。

しかし完全に一つの会社になってしまうと、両社の社風・企業文化や、それぞれの従業員の労働条件の相違に十分に配慮できず、かえって合併後に摩擦と混乱をもたらすことがあります。

そこで、両社を一つの会社にすることを回避しつつ、経営を統合する方法として『株式買収』があります」

つまり、A社がB社の株を買うことで、B社を所有・支配するという関係になれば、それぞれの会社組織はバラバラだが、同じ経営陣が2つの会社を支配できる。つまり「経営統合」ができるというわけだ。

●「株式移転」という方法もある

「この『会社の支配』は、通常は発行済み株式総数の過半数(つまり50パーセント超過)を買収・保有すれば完成すると考えられています。

しかし、明日に何が起きるか予想できない現代の複雑な経営環境下で、より迅速・確実に意思決定をするためには、支配をより強化したいという考えもあります。

その『会社支配』という観点でみるならば、相手の発行済み株式のすべてを買収して、100パーセント子会社にするのがベターと言えます」

ただ、この「100%完全子会社化」を、株式を上場している企業に対して行うのは、難しそうだ。

「そうですね。何万人もいる株主全員から買収するなんて、現実には不可能です。そこでこうした際には、『株式移転』と呼ばれる方法を利用します」

株式移転とは、どんな方法なのだろうか?

「新たに設立するX社へA社の株式を移転させ、その代わりにA社の株主らに対して、X社が新たに発行する株式を交付するという方法です。その結果、X社とA社は100パーセント親子関係となります。

これは、A社の株主総会の特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上)で、実施が可能です。つまり、すべての株を買収しなくても、X社とA社の完全親子関係を実現できるのです」

●KADOKAWAとドワンゴの「経営統合」の方式は?

では今回、KADOKAWAとドワンゴがおこなう「経営統合」は、どんな形式なのだろうか。

「今回発表されたのは、2社が合同して、経営統合を目的に『株式移転』を行うという方法ですね。つまり、A社とB社が合同してX社を設立して、2社ともX社に株式を移転させ、2社ともにX社の100パーセント子会社となるのです」

こうすれば、新しくできたX社の経営陣が、A社の経営についても、B社の経営についても、担うことができるわけだ。

今井弁護士は「ともにX社の子会社なので、A社とB社は兄弟会社とも呼ばれます。このような形で、A社とB社が合同することで、完全親会社を設立することができるのですね。これは株式移転の妙味の一つです」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る