13116.jpg
復興事業で「賃金不払い」 被災地の仕事で「賃金トラブル」に巻き込まれたら?
2013年05月30日 21時15分

東日本大震災から2年が過ぎた。被災地は復興に向けて、少しずつ歩み続けているが、まだまだ多くの課題に直面している。そんな被災地の復興・復旧事業を影で支えているのは、全国から集まった労働者たちだ。ところが、がれき処理などに携わったにも関わらず、賃金が支払われていないという事例が相次いで報告されている。

河北新報によると、九州からやってきた50代のある男性は、石巻市で被災建物の解体作業などに関わったが、会社が約束通りの賃金を支払わなかったために、所持金が底をつき、食事を満足に取ることができなくなった。男性は体調を崩して入院したという。

このように、震災復興・復旧事業関連の賃金が支払われなかったら、どうすればよいのだろうか。また、復興・復旧事業に関わる労働者が、賃金トラブルなどに巻き込まれないよう注意すべきことは何だろうか。宮城県で復興支援に取り組む菊地修弁護士に聞いた。

●賃金の支払いを請求し続けても、ラチが明かない場合は「法テラス」に相談

「賃金未払いがあった場合は、決して諦めずに、雇用主(事業者)に賃金を支払うように請求し続けてください。その際、請求は書面でおこなってください」

菊地弁護士はこのようにアドバイスする。その上で、「『一人では不安』ということもありますから、労働組合(「◯◯ユニオン」等)に相談して、一緒に交渉をやってもらうと良いでしょう」と付け加える。

それでも、ラチが明かなかったら、どうすればよいのだろうか。

「そのような場合は、弁護士に相談・依頼して、示談交渉や労働審判申立などをおこなうことになります。このとき、弁護士費用は心配する必要はありません。法テラスでは、弁護士費用などを支払う余裕がない方に対して、その費用を立て替える制度があります」

「法テラス」というのは、日本司法支援センターの愛称で、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所だ。無料の法律相談や弁護士費用の立替えも行っているので、困ったときにまず相談してみる先として覚えておくとよいだろう。全国各地に支部があるほか、電話での相談も受け付けているので、どこからでもアクセスが可能だ。

●「雇用主が『労働条件』の明示を拒んだら、そこで働くことはやめるべし」

では、復興・復旧事業に関わる労働者が、賃金トラブルなどに巻き込まれないように注意すべきポイントは何だろうか。

「まずは、雇われたときに雇用主に対し、賃金や労働時間などの『労働条件』を書面で明示させることです。雇用主は、労働者を雇用したとき、労働条件を明示する義務が定められており、これに違反すると罰則があります。

もし雇用主がこの点を拒否したり、またはあいまいにするようであれば、そもそもそこで働くことはやめるべきでしょう」

被災地で職を求める人は今後もあとをたたないだろう。そのような人たちを喰いものにする業者は決して許されるべきではない。菊地弁護士がアドバイスしているように、あきらめずに賃金を請求し、それでもダメなら、法テラスなどの専門機関に相談することをすすめたい。

(弁護士ドットコムニュース)

東日本大震災から2年が過ぎた。被災地は復興に向けて、少しずつ歩み続けているが、まだまだ多くの課題に直面している。そんな被災地の復興・復旧事業を影で支えているのは、全国から集まった労働者たちだ。ところが、がれき処理などに携わったにも関わらず、賃金が支払われていないという事例が相次いで報告されている。

河北新報によると、九州からやってきた50代のある男性は、石巻市で被災建物の解体作業などに関わったが、会社が約束通りの賃金を支払わなかったために、所持金が底をつき、食事を満足に取ることができなくなった。男性は体調を崩して入院したという。

このように、震災復興・復旧事業関連の賃金が支払われなかったら、どうすればよいのだろうか。また、復興・復旧事業に関わる労働者が、賃金トラブルなどに巻き込まれないよう注意すべきことは何だろうか。宮城県で復興支援に取り組む菊地修弁護士に聞いた。

●賃金の支払いを請求し続けても、ラチが明かない場合は「法テラス」に相談

「賃金未払いがあった場合は、決して諦めずに、雇用主(事業者)に賃金を支払うように請求し続けてください。その際、請求は書面でおこなってください」

菊地弁護士はこのようにアドバイスする。その上で、「『一人では不安』ということもありますから、労働組合(「◯◯ユニオン」等)に相談して、一緒に交渉をやってもらうと良いでしょう」と付け加える。

それでも、ラチが明かなかったら、どうすればよいのだろうか。

「そのような場合は、弁護士に相談・依頼して、示談交渉や労働審判申立などをおこなうことになります。このとき、弁護士費用は心配する必要はありません。法テラスでは、弁護士費用などを支払う余裕がない方に対して、その費用を立て替える制度があります」

「法テラス」というのは、日本司法支援センターの愛称で、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所だ。無料の法律相談や弁護士費用の立替えも行っているので、困ったときにまず相談してみる先として覚えておくとよいだろう。全国各地に支部があるほか、電話での相談も受け付けているので、どこからでもアクセスが可能だ。

●「雇用主が『労働条件』の明示を拒んだら、そこで働くことはやめるべし」

では、復興・復旧事業に関わる労働者が、賃金トラブルなどに巻き込まれないように注意すべきポイントは何だろうか。

「まずは、雇われたときに雇用主に対し、賃金や労働時間などの『労働条件』を書面で明示させることです。雇用主は、労働者を雇用したとき、労働条件を明示する義務が定められており、これに違反すると罰則があります。

もし雇用主がこの点を拒否したり、またはあいまいにするようであれば、そもそもそこで働くことはやめるべきでしょう」

被災地で職を求める人は今後もあとをたたないだろう。そのような人たちを喰いものにする業者は決して許されるべきではない。菊地弁護士がアドバイスしているように、あきらめずに賃金を請求し、それでもダメなら、法テラスなどの専門機関に相談することをすすめたい。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る